「ノボリさん、お願いがあるんです」
「おや、ナマエ様いかがなさいました」
「ノボリさんのシャンデラちゃんに会いたいです!」
廃人集うバトルサフウェイで私も例に漏れずバトルに参加してみたのが半年前。
そこで私は出会ったのです。
ノボリさん
の、シャンデラに!
ノボリさんのシャンデラちゃんに一目惚れした私はシャンデラに会うために
時にトウヤ君トウコちゃんにも協力してもらい、全力で廃人の道を突き進んでいました。
何度も何度も通っているうちに
ノボリさんとはすっかり顔なじみになってしまった。
今日は遅い時間に挑戦したので私が今日最後の挑戦者だろう。バトルを終えてから思いきってノボリさんにお願いしてみた。
それが冒頭である。
「シャンデラ…ですか」
「駄目ですか?」
「かまいませんが…。ワタクシまだ仕事が残っておりまして」
「ならその間シャンデラちゃんと遊ばせて下さい!」
今にも土下座するんじゃないかという勢いで頼み込むと制帽のつばをつまみながら
「わかりました。では休憩室にどうぞ」
「ありがとうございます!」
手でついてくるように促され、うきうきしながらついて行く。
「こちらにシャンデラが入っております」
差し出されたモンスターボールを受け取り、仕事にもどるノボリさんを見送る
「出てきてシャンデラちゃん!」
1人になり、浮かれたテンションのままボールを放る
「デラッシャーン!」
赤い光と共に現れたシャンデラ
「あああシャンデラちゃん可愛いぃぃい!!」
テンションがあがって声をあげたがシャンデラは状況が呑み込めないようで不思議そうに揺れている
可愛い。すごく可愛い。
「シャンデラちゃんこんにちは。私はナマエ。けっこうバトルしたんだけどわからないかな?」
今すぐ抱きつきたい衝動を抑えてちゃんと自己紹介をする。
シャンデラはキョトンとしていたが思い出したように周りをゆらゆら回り始めた
「…シャン!」
どうやらわかってくれたらしく、正面にきて声をあげた。
「可愛いなぁ可愛いなぁ!!シャンデラちゃん抱きしめてもいい!?」
つい抑えきれずシャンデラに向かってそう言うと嫌がるそぶりも見せずにシャーン、と鳴いた。
「シャンデラちゃん!!」
ぎゅうーっとしがみついて頬ずりする。ちょっと痛いけどかまうものか。炎があたらないように気を遣うシャンデラちゃんマジ天使
「シャンデラちゃんになら殺されてもいい…」
「シャンデラ、オーバーヒート!」
「ひぇぇぇ!?嘘です殺されたくはないです!!」
突然物騒な命令を下したのはいつの間にか入ってきてたのかノボリさん、の双子のクダリさんだ。ダブルはあまり挑戦しないからクダリさんとはあまり面識がない
戸惑うシャンデラちゃんは一旦私から離れる。
クダリさんは怪訝そうに私をみている
そうか、今の私は勝手に休憩室に入り込んでシャンデラちゃんに危害を加えるかもしれない怪しい人物なのか。
「きみ、誰?」
「決して怪しい者ではございません。ただの廃人です」
「どうみても変人だけどね」
クダリがにっこり口角をあげる。だがそれは威圧感たっぷりで私の心を抉る
「ノボリさんに許可とってます…」
「本当?」
「本当でございます」
まだ疑っているクダリさんに答えたのはタイミングよく休憩室に入ってきたノボリさん
「あ、そうなの。ごめんね疑って」
クダリさんはあっさり警戒心を解いて今度こそにっこり笑った
素敵な笑顔です。
「ナマエ様、満足いただけましたか?」
「はい!シャンデラちゃんめちゃくちゃ可愛いかったです!」
高らかにそう言うとシャンデラちゃんがまたすり寄ってきてくれた。可愛すぎて鼻血でそう。
「それは良かった」
ノボリさんが制帽のつばに手をかける。クセなのかな。
その様子をみてクダリが思いついたように声をあげた
「ノボリ!もしかしてこの子?」
「こ、こらクダリ!」
「何がですか?」
ノボリさんはなんでもありません、とどうみても動揺しながらシャンデラをボールに戻す。ああ残念。
「ナマエ様、もう夜も更けて参りました。夜道に女性1人では物騒ですからお送りいたしますので少々お待ち下さい」
こちらに向き合って早口で言い切ったノボリさんはその勢いのまま休憩室を出て行った。
呆然と立ち尽くしていたが我にかえって
「気を遣わなくていいのに…」
と手持ち無沙汰に呟くとクダリさんがこちらを向いた。
「ノボリ、うれしそう。キミが会いにきてくれて」
「はい?」
「教えてあげる。ノボリが帽子のつばをつまむのは照れてるトキ」
相変わらずにっこり笑い、
「これからもノボリに会いにきてね」
と、クダリさんは言い残して休憩室を後にした
私はシャンデラちゃんに会いに…
シャンデラちゃん。
ノボリさん。
ノボリさんの、シャンデラちゃん。
「え、ええ?」
「ナマエ様、参りましょうか」
扉を開けてコートを脱いだノボリさんがつけたままの制帽のつばをつまんで言った
また会いにこよう。と思った。
───
シャンデラちゃんへの愛が爆発した。後悔はしていない。
愛しいのは、