三徹目の夜を越えて死んだように眠っていたワタクシはけたたましく鳴り響く目覚まし時計を止めてようやく眠りから覚めました。

衣服を整え、仮眠室から執務室へと戻ってみると閑散としており、誰1人おりませんでした。
いつもは誰かしらいるのに珍しいですね、と思いながら自分の席に座って眠気覚ましのコーヒーを啜る。



「ノボリさんノボリさん!!」


突然執務室の扉を勢いよく開けて入ってきたのは部下の1人であるナマエ様。
ああ今日も大変お可愛らしい。…ではなく、いつもノックをしなさいと言っておりますのに。




「ナマエ様、ノックを「聞いて下さいよノボリさん!!」」


その前にワタクシの話を聞きなさい、と言いたいが興奮しているナマエ様に言ってもおそらく無駄でしょう。あきらめておとなしくナマエ様の話に耳を傾ける。



「私さっき痴漢されたんですよ!」


「はいはいそれは良かったです…、…なんですって!?」


どうせたいした話ではないだろうとコーヒーを啜りながら聞き流しそうになったが言われたことを理解し、思わず椅子を倒す勢いで立ち上がる。



「どういうことですか!?」


「人が多い車両に乗ってたらいきなりお尻さわられたんです!」


「なんと!」



大変羨まし、いえいえいかがわしい!!


「地下鉄で痴漢とは…サブウェイマスターとして、放ってはおけませんね」



制帽をかぶり直し、高らかに宣言すると、



「その必要はないと思うよ」



突然聞こえた声に振り返ると、いつの間に入ってきたのやら扉の前にクダリが立っていました。どうしてこの方々はノックというものをしないのでしょうか。いえそれはとりあえずいいとして、


「どうしてです?」



問いかけるとクダリが困ったようにため息を溢す。珍しいですね。なんだかお疲れのようですが。



「ナマエ、その痴漢に反撃したんだ…」



それはすごい、とナマエ様の方を振り向くと気まずそうに目を逸らされる。
何かを誤魔化すように口笛をふくナマエ様。疲れたようにひきつった笑みを浮かべるクダリ。



…嫌な予感しかしません。




「何があったのです…?」


恐る恐るクダリに尋ねれば、ナマエ様に冷ややかな視線を送りながら



「痴漢に、カイリューの破壊光線ぶちあてたんだよねー?」



背後に黒い影を纏いながらクダリがにっこりと笑いました。
ワタクシも一瞬の間をおいてから言葉の意味を理解し、ナマエ様を見れば


「てへぺろ☆」



それはもう茶目っ気たっぷりに満面の笑みをこぼしておりました。
ええ、可愛らしいですとも。
しかし、



「貴方様は何をしているのですか!!」



あまりのぶっとんだ行動に声をあげると、ナマエ様は少し萎縮しながらも



「だって!知り合いがやってたんだもん!!」



「他にも為さる方が!?ではなく、そんなこと真似しちゃいけません!!」


「正当防衛じゃないですか!!」


「過剰防衛でございます!!」



涙目で上目遣いしたって騙されませんよ!


「だいたい貴方様のカイリューのレベルは92でしょう!?」


「あ、こないだレベル93にあがったんですよ!」


「余計駄目です!!」



よくもまぁドラゴンタイプをそこまで育てたものだと感心させられます。うれしそうに報告したナマエ様の笑顔に思わず流されそうになりました。



「それでどうなったのです?」


騙されそうになる気持ちを必死に抑えてとりあえず状況確認の為に再びクダリと向き合う。




「破壊光線のせいで車両は半壊、痴漢はすぐ病院行き、幸い命に別状はなかったみたいだけどしばらく入院だって。ダイヤも大幅に狂ってボク色んなとこに謝りに行った」



ああ、それでそんなに疲れた顔をしているのですね。
そんな騒ぎがあったにも関わらず寝ていたワタクシもなかなかのものですが。


「とにかく手が空いてる鉄道員みんなで復旧作業にとりかかった、なのにナマエ逃げた」


もはやつりあがった口角は完全にひきつっていて
目にはまったく光がこもっていない。
素直に同情するしかありません。


「…わかりました。ではワタクシが後始末を請け負いましょう。もちろん、説教も含めて」




だから貴方は休みなさい、とクダリに告げれば少しだけ通常の笑顔を取り戻し仮眠室へと向かって行った。



「さて、ナマエ様……がいない」


ナマエ様は逃げ出した!


なんというすばやさ。ゼブライカ並、いえさながらメ●ルスライムのようです。


それならばなおさら、経験値はいただきますよ!








───────



「カイリュー、そらをと「ちょい待ちぃ」げっ!クラウドさん!!」


地上に向かって逃げていったという目撃情報の下、ナマエ様を見かけたら確保するように指令を下しワタクシ自身もナマエ様を探していると、ナマエ様を抱えながら地上へ向かう階段を降りてくるクラウドに出会いました。


「クラウド、ナイスです」


「ちょっ!!クラウドさん離してー!!」


「かんにんなぁナマエちゃん」



じたばたもがくナマエ様に余裕の笑みを浮かべるクラウド。流石でございます。


「さぁナマエ様、もう逃げられませんよ」


「ひぃっ!ノボリさんのくろいまなざし!?」




探している間に破壊光線の惨状を目の当たりにしました。加減というものを知らないのでしょうか、酷い有り様でした。




「たっぷりお説教させていただきます」



すっかりおびえて大人しくなったナマエ様に一歩近づくと小さな悲鳴をあげてから、








「っカイリュー!!破壊光線!!」







「「ナマエ様(ちゃん)!?」」






なんということでしょう。カイリュー貴方主人の命令に忠実すぎるのではありませんか。



ナマエ様のしまった、という表情をちらりと見たが最後
















「あなたも痴漢ですか?」

「…いえ」



次に目が覚めた時は病院で、隣には包帯を巻いて苦笑いをしている件の痴漢がおりました。












(あれ、クラウド。ノボリは?)
(破壊光線の犠牲んなりました…)
(………………………ナマエ?)
(お見舞い行ってきまーすっ)
(白ボス、追いかけんほうが身のためやで…)
(もうやだ)









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相互記念に愛華さまに捧げます!
ノボリでギャグ…あれどうしてこうなった。ワタルさんが好きなんです…。
こんな文ですいません。書き直しはいくらでも受け付けますので気にいらなかったら遠慮なく言って下さい!




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