じゅうぶんなついています




「どうしてワタクシよりクダリになついているのですか!?」




私がクダリさんにすりよっていたのが納得いかないのか、ノボリさんはクダリさんに駆け寄って両肩を掴んで前後に揺らしていた。




「えー?ボクポフィンあげただけ!」



クダリさんが素直に答えるとノボリさんはピタッと動きを止め「なるほど…」と呟いて私の方を見た。



そしてなにかガサゴソし、その手に取りだしたるはさっき食べたばかりのポフィン。しかもひとつではなく大量に。


「ポフィンならワタクシが差し上げます。さぁどうぞ」


ワタクシが、と強調するように両手いっぱいのポフィンを差し出されたけれどさっきまるごと食べたし正直お腹一杯である。
どうしたものかと右往左往していると、



「メア、ワタクシのは食べたくないのですか…?」


と拒否されたと思ったのかどこか悲しそうだった。
そんな表情されると罪悪感が凄まじいのだけれど、しかし今はちょっと食べられそうにない。満腹中枢がよく働いているようです。




「メア?ノボリがつけたの?」


私が大量のポフィンとにらめっこをしているとクダリさんが問いかけた。ノボリさんはポフィンを諦めたようで、しまいながら




「いいえ、ネームタグがついていたのです」



ここにきて漸くクダリさんに私のことを説明してもらった。ここにくるまでの経緯と名前についてくらいだけど、ポケモンの姿では伝えることが出来なかったのでほっと一息つく。






「ふーん、じゃあメアよろしくね!あとでまたあげるから!」



あとでまたくれると言うのはポフィンのことだろう。よろしくねと言われたのでこちらこそ、という意味を込めて近づいて頬をすりすりして鳴くと、クダリさんは笑ってくれた。





「どうしてクダリばかり…!」



しかしノボリさんは今にも血の涙でも流しそうな顔で真っ黒な落ち込んでいるオーラを発していた。



流石に申し訳なくなったのでノボリさんにも抱きつこうかと思ったらこちらが行く前にノボリさんの両腕に閉じ込められ





「こうなったらメアがワタクシになつくように全力で愛でることにします!!」



なんかよくわからない宣言をされた。クダリはおー。と他人事のように笑っているが私は今全力で抱きしめられて少し苦しいです。




苦しいので離してくれ、とシャンシャン言ってちょっとだけバタつくとあっさり解放された。
勢いでノボリさんから距離をとってから振り返ってから後悔した。

ノボリさんが行き場をなくした両手を見つめてみるからに凹んでいた。




ごめんねノボリさん、そんなつもりはなかったんだよ。



フォローにいこうと思ったけどケタケタと笑い声が聞こえて見ればクダリさんがノボリさんを指差しながら笑っていた。ひどいな。
クダリさんを白い目で見ているうちにインカムが入り、すぐにノボリさんは再び車両へと向かってしまった。




その背中から哀愁が漂っていたから
帰ってきたら抱きつこうと心に決めた。






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mae ato