やっぱり最初はうまくいきません


「メア、オーバーヒート!」

『シャンッ!!』


私が放った炎は野生のレパルダスにあたり、レパルダスは倒れた。


シャンデラくんとのバトルを目撃されてからノボリさんは仕事の合間を縫って私の育成に励んでくれた。

野生のポケモンともバトルを繰り返し、ひと月程経って、自分でいうのもなんだけどだいぶ強くなった。…気がする。


今もパン屋さんからいい匂いが漂う道路の外れの草むらで野生のポケモンとバトルをしている。
次のバトルへ向けて進もうとしたけれど一緒にいたノボリさんが動かない。


「フム…」


振り返るとなにか考える仕草をしていたので近寄ればノボリさんは長い脚を折って私と目線を合わせる。


「メア、そろそろノーマルで挑戦者とバトルをしてみますか?」


それはまさしく私が願っていたことで、驚きつつも喜んで元気よく返事をした。







────────





ガタゴトと音をたてる線路を走る列車、
はじめてのバトルサブウェイの車両の中で私は緊張していた。


隣にはノボリさんがいて私に色々と声をかけてくれるけれどとても落ち着けそうになかった。

ノボリさんの役にたちたい、でも迷惑はかけたくない。
負けられない。


まもなく挑戦者がやってくるということで私はモンスターボールの中へと戻される。


緊張で頭がどうにかなりそうなタイミングで車両の扉は開かれた。








前口上が終わり、私はモンスターボールから解放された。
ギラギラと目を光らせる挑戦者とその相棒のポケモン。



審判の声を合図にバトルは始まった─






ノボリさんの指示で動きだす。的確な指示に私は全力で従う。


相性も決して悪くはなかった。








けれど。





「メア、お疲れ様でした。」




私は相手を1体も倒すことができなかった。

ノボリさんの指示は完璧だった。私の持てる力を最大限に引き出してくれた。

それでも、負けてしまったのは私が緊張していたことと、単純な実力不足だった。


「よくがんばりましたね、メア」

ノボリさんが頭を撫でてくれたけど私は悔しいのと悲しいので泣きたくて仕方なかった。








──────




結局あの後バトルする気持ちになれないまま執務室でぼんやりとしていた


ふとカレンダーをみれば私がシャンデラの姿になってからちょうど半年が経っていた。

半年間、ノボリさんと一緒に過ごしてたくさんの愛情を注いでもらって、クダリさんとも遊んだりして毎日楽しくて幸せだった。
だからこそ、もう半年も過ぎてしまっていたことに愕然とした。




『目的はなんや?』


マサキさんの言葉を思い出す。あの時は適当にごまかしたけど


私の、本当の、目的は。


「メア?」


ノボリさんに声をかけられて我に返る。


今まで集中して書類整備に取り組んでいたのが一段落したらしい。立ち上がって身体を伸ばし始めた。


「今日はバトルをして疲れたでしょう。少しはやいですがお昼に致しましょうか」


時計を見やるともうすぐお昼時だ。


軽く返事をして傍に近寄る。今日のごはんはなんだろう。









−私の、本当の目的は





もうー




mae ato