名前は俺よりも長くこの船に乗っていた古株だ。幼い頃から柄の悪い男ばかりに囲まれて育ったせいか、名前は残念な性格になってしまった。品が欠けているというか、自分は女なんだという意識が薄いのだ。それが原因で俺は毎日冷や冷やしている。

「あー、気持ちよかったー。」
「ぶっ、てめっ！」
「汚ない。」
「んなことより服を着ろよ服を！」

シャワーを浴びて出て来た名前は、俺が部屋に居るというにも関わらず、バスタオル一枚纏っただけの状態で現れた。俺が喚いて服を着るようにきつく促しても名前は服を着ようとはせず、それどころかそのままの様子で此方に近づいてきた。

「お前、男がいるっつうのによくも、」
「エースは平気でしょ。」
「なんだよそれ、」

言われて少し傷ついた。俺だから平気っていうのは、要するに俺を男として見なしていないということになる。好きな女に言われて一番傷つく一言だ。傷ついたのと、目のやり場に困ったので深く溜め息を吐いた。名前は構わず、相も変わらずタオル一枚でベッドの上でゴロゴロしていた。そっちが俺をそういう風に思っているなら、力づくでそれを変えるしかない。

「名前。」
「ん、………やっ！」

名前を呼んだと同時に覆い被さるように名前に跨がり無理矢理唇を押し付けた。名前は突然のことで何が何だか解らない様子で、微かに震えていた。

「何だ、お前もたまには女みたいな声をだすんだな。」
「ば、馬鹿！降りろ！」
「嫌だ。名前が俺を男として感じるまで離れねぇ。」

そう言えば、名前は頬を真っ赤に染めて、視線を反らした。いつもは男っぽく振る舞っているからそんな表情初めてみた。その表情が余計に拍車をかけていることをあいつは知らない。

「名前、」
「……なに。」
「好きだ。」

胸の内を告白すれば、名前はそれ以上は口に出さなかった。けれど、微かに頷いたのがはっきりと見えて、少し、安心した。



メロウ・アウト



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