短編 | ナノ
D兄弟とご飯

「エサですよー。」
「エサって何だよ、普通に言え。」
「飯だぁああぁぁあぁぁああ!!!」

勢いよく奇声をあげながら椅子に座ってご飯に頭から突っ込んだルフィとは対称にエースはあーとかうーとかだるそうに唸りながら席についた。私は二人が席に座るのを確認すると、真ん中の席に座ってご飯を食べはじめた。毎日のことだが、この兄弟の食卓はいつもカオスだ。まともに大人しく食事をした試しがない。ご飯粒をふんだんにほっぺたに沢山つけて肉を頬張るルフィを横目に見ながら、手渡された茶碗にご飯を山盛りによそった。こいつは一回の食事の量が馬鹿みたいに多い。おかげで普通の炊飯器じゃとてもじゃないけど賄えなくて、今では一回に2、30人分の白米を炊ける業務用の炊飯器を愛用している。だがそれでも毎食必ずその炊飯器が空になるくらいだから、ルフィのお腹の中は本当にドラ★もんの四次元ポケットといい勝負だと思う。

「ぶぁあ、ぶぁあ゙あ、(なあ、なあ、)」
「ん?何??」

何やら話しかけているらしいが、お口の中に沢山色んなものが詰まっていて、理解に苦しんだ。それに、忙しなくお皿やら何やらがカチンカチンと擦り当たるような音や、掃除機のような爆音が周りで響いてなおよく聞こえなかった。ていうか、口にものが入った状態で喋るか普通?

「びょゔぼばぶぶばぁお゙ぁ゙びぁあ゛!(この肉美味いなあ!)」
「うん、後でゆっくり聞くからね。」
「ぼぅ!(おう!)」

やんわり優しくスルーして、また箸を動かした。するとその瞬間、何か不審な音が耳に入ってきた。

「あれ、可笑しいなあ…。食事中のはずなのに何者かの鼾が聞こえる。」

ちらと横を向けば、顔をお茶碗に突っ込み、箸を握ったまま机に突っ伏して撃沈しているそばかすの青年が一人。

「おーい、そこのお兄さん、」
「…………。」
「寝てたらルフィに自分の分全部吸いとられるぞー…って、こらルフィ、言ってる傍から何エースの分の肉取ってんの!?」
「ぶぁぁぃぶぉぬぉ゙ばぶぁぢだ!(速いもの勝ちだ!)」
「いつからそんなサバイバルなルールが設けられたのかしらねー。」
「ばぁばぁばあぶあ!ぐはあっ…!!(はははは!…ぐわあっ!)」

笑ってる場合じゃねえよって、笑って勝手にむせちゃったよこの子。だから口に物入ったまま話すなって言ってるのに。とりあえずお茶を飲ませて背中をさすってやると、ごっくんと音をならして塊が喉を通過するのが見えたので一安心した。


幸福な食卓


今日も至って我が家の食卓は平和だ。


title kokkyu.
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