短編 | ナノ

なんだろう。最近隊長の私に対する対応とか、接し方が妙に可笑しい。最初はただ私に怒っているだけなのだと、親父を取られてヤキモチを焼いているのだろう思っていた。だがどうやら違うらしい。そのことについて親父やマルコ隊長とかに相談を持ち掛けてみたものの、皆そろってにんまりと何か意味深に(しかもどこか見守ってあげるよとでも言いたげな生暖かな目である)笑うだけでそれ以上は語ろうとはしないのだ。明らかに皆して態度が可笑しいので、もしかしたら皆グルになって私をからかって遊んでいるのではないかと思う今日この頃。

「…………。」

ごろりと寝返りを打つ。動く度に軋むベッドの音を聞くのはこれでもう何回目だろうか。二日酔いになってしまったようだ。頭がぐらぐらして気持ち悪かった。ちら、と小さな窓を横目で見れば、もうすっかり明るくなっていた。そろそろ起きなければならない。

ゆっくり深呼吸を数回して起き上がった。起き上がると同時にぐらりと視界が歪み、吐き気と目眩が私を襲った。

「あー…、これヤバいなあ。」

ぐらぐらする頭の中で昨日のことが甦る。宴で何時も以上に調子に乗ってお酒を飲みすぎてしまったのだ。昨日エース隊長があんまり飲むんじゃねえと私にだけ酷く怒っていたのを思い出した。「身体に悪い」とか、「身体壊して俺の子供が産めなくなったらどうすんだ」とか何とか訳の解らないことを言っていた。多分あの人も酔ってたんだろうな。じゃなきゃあんな言葉出るわけない。だいたいあのどこでも寝ちゃうような生活力の乏しい人が結婚だの何だの人並みに考えているなんて俄かに信じがたいもの。しかし昨日はお酒が入っていたとは言え、やっぱり最近の隊長は可笑しい。

「何か悩み事でもあんのかな、隊長……。」

いろいろぐちゃぐちゃな頭の中で考えても埒があかず、それどころか余計に頭が痛くなるので、まあいっか、と思ってベッドから降りると、部屋から出た。寝起きなのと二日酔いが合わさって、足がふらふらとふらついて上手く歩けなかった。そのままの足取りでは誰かに当たってしまうんではないかと考えたが、案の定何かに当たって行く手を遮られた。数歩後ずさって、当たってしまった人の顔を見ようと視線を上げれば、まあ吃驚。

「あ、エース隊長。」

間違いなくエース隊長だ。エース隊長は私を見下ろすようにして見て、ふらふらな私を支えるように両肩に手を添えてくれていた。私はぺこりとお辞儀をすると、そのまままた歩こうと一歩踏み出した。

「おい、待てよ。そんな状態で何処行く気だ?」
「何処って、親父の所。」
「お前…、てか気分悪いなら寝てろ。」
「やだ。親父に会えば元気になりますから大丈夫ですよー。」
「あ゙?」

そう言えばエース隊長は何故か怒った。やはりそれ程までに私に親父を取られるのが嫌らしい。ならば今度からはあんまり親父について語るのはやめようと心の中で決心した。

「何でお前はいっつも親父にばっか甘えるんだよ!?」
「え?……親父だから?」
「……た、たまには俺にも甘えろよ…!」(小声)
「は?何か言いましたか?すみません、今頭がガンガンしててよく聞こえないんですよ。」
「……………。」
「え、隊長、何で泣きそうな顔してるんですか!?どうしたんですか!?」
「何でもねえよ………っ!」


2015.07.20.加筆.
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