短編 | ナノ
病み期なベルトルトを慰めてみる

布団の中でまるで彼はこの世界から自分を遮断するように覆って、それから私をまるで縋る様に抱きしめる。暗くて、そして頬には男のするりと肌触りのいい髪がさわさわと触れる。始終馨るのは彼のいいにおいだ。うす暗い中で彼の瞳が鈍く光って私を見ている。彼は夜が怖いと言った。それから朝も怖いと言った。大真面目にそう言うから私は思わず笑ってしまった。ベルトルトらしくないねといえば、彼は僕らしいって何?と言ったので思わず口を紡いだ。もうこうなったら彼はどうしようもない。傷つくと分かっていながらも、それでも彼がこの世界に出て行こうとするのは、怖いと分かっていながらもでも完璧に世界から逃げることなんてできないと分かっていて、それでいて彼は本当は一人ぼっちなのが嫌で、私なんかよりも強いけれどその分孤独の恐ろしさを知っているからなんだと思う。彼はわたしなんかよりもとっても強くて、それでいて私よりも本当は臆病だ。こうして私を自分の腕の中に閉じ込めて居るのは、彼の小さな、そして最後の抵抗なんだと思う。
「ベルトルトは強くて優しいよ。」
「世界は僕にちっとも優しくないけどね。」
「もう、またそう言う。」
「……見放されてるんだよ、僕はきっと。」
彼はそう言って暫く黙った。私を抱きしめる腕に一層力が篭って、それから長くて固い脚が絡まる。お腹の中の双子ってこんな感じなのかな、ぼんやりそう思った。それからまたぱちりと目が合う。相変わらず鈍く光っている。私の視界に映る世界は全て必要なのに、世界はきっと私たちを必要だなんて思ってない。皮肉だね、そうして二人で笑った。
「じゃあ、私を離さなきゃいいよ。ずっと。」
そうすればきっと私はあなたを見放さないから。鈍く光るそれが、柔らかく細められた。世界から見放されていると思うなら、私のはしっこをかじるといいよ。


2013.10.11.
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