短編 | ナノ
野生の変態が現れたシリーズvol.1(ロー)

※学パロで夢主を追いかける野生の変態たちからひたすらエスケープするシリーズ




心拍数が急上昇し、呼吸が乱れてゆくのがはっきりと解る。唇は微かに震え、首筋からはひやりと一筋の汗が流れ出た。真っ暗な視界の中で、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされている。暗い上に狭いこの場所からは出来るだけ一刻も速く出たいのだが、今はやむを得ない。もし今此処から出てしまえば、必ず見つかり捕らえられてしまう。それでは今まで必死に逃亡して隠れた意味が無くなってしまう。外の様子を確認しようと耳をぴったりとくっ付ける。すると同時にバンッ!という荒々しくドアを開けたような音が耳に飛び込み、肩がびくりと震え、鳥肌がたった。直後、キュッキュッというような上履きが床を蹴るように誰かが歩いて此方に近づいてくる音が聞こえてきた。ゆっくり、ゆっくり、でも確実に音は近づいてくる。

恐怖を圧し殺すようにギュッと自分の着ているシャツを握り、必死に落ち着くように努めようとするが、やはり恐怖には勝てなかった。そんな私の様子を嘲笑うかのように、近づいてくる人物は歩みを止めることはなかった。それどころか、くつりくつりと喉を鳴らして怪しげに笑っているのが聞こえてきた。


「…何処にいる?」
「…………。」
「速く出てこねぇと此方から行くぜ。」
「…………。」

感情の隠っていない冷ややかな声が教室に響く。本当は私の居場所を既に知っているのにわざとら焦らして私を虐めて楽しんでいるに違いない。私は怒りと恐怖で冷や汗と震えが止まらない。ガチャリと重々しく扉が開くと同時に、逆光で背の高い人間の男の影がぼんやり浮かび上がった。ずっと暗い所にいたから視界がまだ鮮明ではないが、やはり間違いなく彼だ。

「……名前、掃除用具入れに入って何やってんだ?」
「いや、その…。」

彼は口角を上げて笑っているようだったが、目はまるで笑っていない。見下ろすように私を見て、私が逃げ出さないように確りと出口を塞いでいた。くっきりと隈の刻まれた鋭い目と視線が私を捕らえて離さない。

「汗だくじゃねぇか。」
「あはは、あは…」
「ブラジャー丸見えだぜ?」
「え、」

にたりと品のない厭らしい笑みを浮かべて彼は視線を私の胸元へと下ろした。掃除用具入れにいた暑さと、別の意味でかいた嫌な汗でぐっしょり濡れたせいか、胸元が透けて下着が丸見えだった。

「わざとか?」
「いいえ、決して違います。」
「ほお。」
「ち、違うから!」

彼はぐい、とその白い骨ばった手を私の頬に添えると、唇へと視線を移した。

「もう鬼ごっこは終わりでいいな?」

耳元で擽るように囁いて彼は唇を近づけてきた。最後の手段を使うしかないと、目をカッと見開いて、息を大きく吸った。

「あ!ドフラミンゴ先生だ!」
「!?」

彼が私の指差した方向を向いたと同時に、私は瞬時に彼の脇の間を縫うように抜け出すと、命懸けで走って逃亡を計った。

「くそ、名前……!」

だがすぐに気付かれてぬっと彼の手が私を捕らえようと伸ばされた。だが幸い、寸での所で免れて、彼の手は私の腕ではなく、空気を掴んだ。私は後ろを振り向くことなく無我夢中で走った。後ろからは私の名を呼ぶ怒号に近い彼の声が聞こえてきたが、それにも構わず必死に足を動かした。


今日も私は逃げている。


2015.08.31.加筆修正.
title Chissa`!.
(Where did you go?)
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