短編 | ナノ
一刻も早くホテルに泊まって一発●りたい尾形とデートを純粋に楽しみたい夢主

「なあ」
「あ、あそこインスタで見たやつだ。今時期だから空いてるみたい。あのクリームソーダ飲んでみたいなあ」
「なあ、そろそろ休憩しねえか。」
「そうですね。あ、ここも営業再開したみたいですね。外の席であれば隣で座れるみたいです。よかったよかった。」
「おい、」
「あのナッツクリームたっぷりのパンケーキ食べてみたいなあ。あれ、一人で食べきれると思います?」
「聞いてんのか。」
「聞いてますよ。」
「そろそろ休憩するかって聞いてんだよ。」
「だからあのカフェ行こうか聞いてるんですよ。」
「………」
「………」
「…あそこの角にあるホテルで休憩す…」
「満員ってかいてましたよ。」
「見たのか」
「見ました」
「………」
「しっかりと、ランプが点ってましたよ。」

私がそう言えば透明な目をした男がぼうっと虚空を見つめていた。気温は27度。初夏というにはあまりにも蒸した日だ。ぽっかりと真っ青な空に浮かぶ雲はまるで綿菓子のようにくっきりとしていて、地平線の向こう側に見える新宿のビル群ががゆらゆらと揺れてまるで蜃気楼のように思えた。アスファルトからの熱が卸したてのヒールの底から伝ってくる。自分で初めて塗った赤のペディキュアは、未だ閉ざされたままのショーウィンドウ越しからも目立っていて、こんな時ではあるが心なしか気分が高揚した。

暑いのに不自然に絡んで腰を寄せようとする太い腕を軽くいなし、そのまま腕を引いて道を戻ろうか、そのまま歩もうか暫し悩んだ。緊急事態宣言解除後の新宿は以前ほどの活気は無いが、意外にも人通りが多い。解除されたからこそこうして出歩いている訳だけど、流石に人の多いほうに行かない方が無難だろう。新宿ならどこかしらやっているだろうと安易な気持ちでデート場所にここを選んでしまったのはちょっとミスリードだったかと半分思い始めた矢先、再びこちらに身を寄せようとした傍の男の腕がついぞ私の腰を掴んだ。

「ちょ、尾形さん、密です、密。」
「百合子かお前は。」
「友達じゃ無いんですから…。ちょっと緩みすぎですよ、意識。」
「デート中に密もクソもあるか。今まで散々待ったんだ、解禁しとけ。」
「確かに…」







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