短編 | ナノ
ついったセリフお題vol.1(マルコ)

◎マルコ→抱き寄せて「お前が淫らになるところ、見てみたいなあ」といいます。


賊につきものなのは酒とお宝と女とまあだいたいこんな感じのイメージを持っているものが多いだろうがそれは強ち間違いなく、特にこの船にいる海賊野郎どもはまあ酒が強くてこちらがドンびくほどである。というか酒弱かろうと強かろうとガブガブ流し入れて毎夜毎夜そんな感じで終日酔っ払ってるような奴もそう少なくない。船の上でももちろんそうだが、陸の上でもそうなのだ。

「……すみません、これでちょっと最後にします。」
「あー?どうした、名前。もうおねんねか?」

ほんのり頬を蒸気させてニコニコ笑うリーゼントは笑いつつも心配してか私にお冷の入ったグラスを差し出してくれたのでそれをおとなしく口に含む。

「おい、大丈夫かよ名前。」
「うん……」

だらりと一筋だらしなく水滴が首筋を伝っていったが、今はそれを拭うことさえ億劫だ。眠くてしようがない。

「…もう、もどります。」

椅子から立ち上がりそろりと歩こうとした刹那、ぐわんと世界がが揺らいだかと思えば視界に慌てたリーゼントとそばかすが見えたかと思えば、背中にすうっと硬い何かが添えられてなんとか体勢を立て直すことに成功した。

「誰だよい、名前にこんなになるまで飲ませたのは?」

すん、と息を吸えばかすかな海の香りとともに嗅ぎなれた、男のいい匂いがする。彼はまったく、と悪態をつくと手馴れたように私の肩に腕を回し、ぐいっと私の膝にも腕を回した。酒を飲んだあと特有のどくどくと心臓が巻く打つのと同時に別の意味で脈が早まっていく気がした。

「今日はそんなに飲ませてないぜ?」
「安い酒でも煽らせたのか?」
「逆だ、高い酒飲ませたらこうなっちまった。済まなかったなあ、名前。」

サッチはそう言って再び私にお水のグラスを勧めた。私は男、マルコの腕の中でそれを受け取ると再び口をつけた。今は兎に角酸素と水と睡眠が必要である。

「もう寝ろよい。」







そう、最後に聴いたのは心地よいテノールだった。

「……たいちょ、う」
「…ああ。」
「何、を」

何、と自分で問いかけながらも自分でもこの状況をいち早く把握するように寝起きの未だ十分に覚醒せぬ頭をフル回転させる。どうやら私は見慣れぬ部屋のベッドの上に寝かされているらしい。そういえば自分は酔っ払っていたのだから、寝かされるのは別段不思議ではなかろう。しかし特筆すべきは私の身に起こっている事態であった。ブラジャーは外され、着慣れぬ大きなシャツに着替えさせられている。履いていたジーンズは脱がされ、なまじろい自身の足が視界に見えた。

「息しづらそうだから外したんだよい。」
「はあ、」

いや、そこまではまあ百歩譲っていいとしても、だ。

「…あの、マルコ隊長。」
「ん。」
「なんで私に腕枕を…?」

私が問いかければ目の前の男基マルコ隊長は何がどうした、とでも言いたそうにこちらを見た。いや、私の反応は至極当たり前というか、何なら落ち着いているぐらいだと思うのだが。知らぬ間にこのように男と密着していたとなれば普通女性なら声出の手だの上がりそうなものである。

「もう気分はいいいのかよい。」
「ええ、まあ。ていうか質問に答えてください。私を介抱してくださったことには大変感謝しますが、何もここまで面倒見ろとは、」
「気にすんなよい。」
「気にしますよ。」

やはりこの部屋はこの男の部屋であったかとようやく覚醒した頭で状況を把握した。全く、これではダメだと先ほどよりかはましになったがややガンガンする頭のままこのベッドから降りようと起き上がろうとした刹那、それを阻止する腕によって私の視界はぐるりと回転した。

「ひゃっ」

と声を上げた瞬間、ぎゅう、と視界に見覚えの有りまくる刺青が広がる。腕枕どころか今度はぎゅうと抱きしめられることとなり事態はますます悪化してしまったようである。すん、と息を吸えば酒の匂いと混じってマルコ隊長の色気のあるいい匂いが広がってガンガンする頭と相まってフラフラするほどである。唇は完全に彼の胸板にくっついてしまっている。

「んふ、息しづらいです、たいちょ、う!」
「くぐもった声がえろい。」
「何を、馬、鹿な!」
「エロくて仕方ねえよい。さっきもフラフラで見ちゃいられなかった。」
「…それは、」

よっていたので不可抗力だと抗議しようと上を向けば、にたりと口角の上がった男を見て思わず肩を震わせた。随分意地の悪い顔である。やばい、と私の本能が警鐘を鳴らすも、逃げ切る自信さえない。その上隊長はもう片方の手で私の無防備に放り出された太ももをいやらしく撫でるという暴挙に乗り出したものだから私は思わず情けのない声を上げることとなった。余裕のない私とは対照的で、おっさんの色気全開でくつくつ笑う男の喉元がなんとも恨めしい。

「最初からこうするつもりで甲斐甲斐しく介抱してくださったんですね。」
「まあな。お前があんまりエロくて見てらんなかった。」
「何ですかエロいって…。マルコ隊長のがよほどエロいですよ!」
「んなわけねえよい。ほかのやつには見せたくねえなあ、と思ったら体が動いちまった。」
「またそんなことを…」
「ほかの男の前ではダメだが、俺の前ならもっとエロくなってもいいよい。」
「へ、変態ばなな!」
「バナナ言うな。」
「変態パイナッ、んむっ」

薄い唇が噛み付いて二言目を阻止した。やはりこのおっさんは私よりよほどえっちな変態であったらしい。


2015/10/20
(セリフはかなり強引に改変してしまった。)
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