短編 | ナノ

「あっ…」

大きくてざらついたその温かな手が自分の乳房を這う。ヤワヤワと優しい手つきで触ったかと思えば、時には少し力を込められて思わず声が漏れる。彼はその形が自分の思い通りに変化するのと、自分にはないその柔らかさと温かさを心行くまで楽しんでいる様に思えた。次第にピンと張った二つの突起を見ると少し満足げに口角を上げて少しだけ意地悪をする様にそこを抓った。

「…杏寿郎さ、ん」
「すまない。ここがあんまり切なそうに張っているので、ついつい構いたくなってしまう。」

そう言いながら着物越しにすっかり主張し始めた私の乳首を、片方の手は親指と人差し指の手で、もう片方の乳首はご自身の唇で柔らかく食んだり、時折意地悪をしてそのまま舌で舐めたり捏ねたりされると辛抱ならなくてだらしのない声が出た。まるで自分の声ではない様な声で本当に恥ずかしい。誰かに聞かれるくらいならと思わず口を癖で抑えそうになれば、それは彼の手で制止され、代わりに彼の熱い舌が侵入してきたので同じくそれに吸い付いた。

すっかりと朝日に覆われた世界はこの薄暗がりの電気や灯火の付いていない部屋を照らすには十分であった。あと一時間もすれば彼の義弟も起き出していつもの様に朝の支度を初めてしまう。こんな危ない時間帯に二人で睦み合って仕舞おうだなんていう彼も、そして私もまたどこか厭らしい様で、でも切実に感じる。忙しくて人望や大きな志と指名と、この家の次期家長としての彼はいつも前に進んでいってしまって置いてけぼりになってしまうので、二人の時間は本当に大事で尊く思う。

「少し、寒いですね。」

目の前の彼が漸く私の着物の帯を解き、するりと肩から脱がせた。久しく外気に触れた肌はブルリと震えた。彼もまた全ての服を脱ぎ捨てて乱雑に布団の側に投げると、目の前の彼が私の背に腕を回し再び口付けたので同じく首に腕を回した。乱雑に畳の上で転がるそれらは何かの残骸の様で少しだけ寂しい様な、男と女の劣情を見せている様で何だか滑稽にも思える。

「じきに暖かくなる。」

彼はそう言ったのでこくんと小さく頷けば、いつもの様に口の端を釣り上げて、それから私の胸と胸の狭間に顔を埋めると、一つ唇を落とした。私の私の胸と胸の狭間には小さな黒子がある。ここに黒子がある事などは母親以外この世で彼しか知らない特別な場所にある。彼はいつもそれを愛おしそうに口付けてくれる。うなじの黒子や、太ももの内側にある黒子、足の甲にある黒子にも一つ一つ丁寧に口付けて、それから再び私に覆いかぶさって瞼に唇を落とした。彼の愛情表現は日頃の彼を見ていると想像がつかないくらいとても繊細で、そしてとても静かだが大胆だ。大きな炎の様に情熱あふれる彼だが、私の様な力のない弱いものに慈しみを持ち優しく触れることの出来る男性だ。乱暴にしては壊れてしまうガラスの様にいつも私に向き合ってくれる。優しくて強い人だ。

「美しいな」
「いつも言ってくれるのね」
「俺は何度でも言おう。嘘はつけない性質(たち)なんだ。」
「素敵な性格の旦那様で私は果報者ですね。」
「それは俺も同じだ!美しいものに美しいと言う幸福を君は呉れる。」
「ふふ、」
「…ここなんかは俺が触れるだけでこんなにピンク色に色づいている…美しく何と艶やかなんだろうといつも思う。」
「あっ」

彼はそう言って再び両の手を伸ばして私の乳房を掬うように取り今度は両の手で乳首に触れて捏ねた。先ほどよりも紅色を増したそこは摘み取ることを待っているかのように主張するそこを弄りながら視線は徐々に徐々に下へと降っていく。そして再び私を後ろに倒すと杏寿郎さんは顔を胸元に寄せ唇で愛撫をしながら、片方の手はくびれをなぞり、下腹を撫でたかと思えば淡い茂みをかき分け、もうすでに濡れそぼっていたそこに這わせた。先ほどから杏寿郎さんと口付けを交わす度にジンジンと疼いていたので自分でもすでに嫌という程分かっていたが、自分の厭らしさに心底恥ずかしさを感じる。

「きょうじゅ、ろうさ、そこはっ…」
「…まだ触っていなかったんだが、随分濡れそぼっているな。」
「ん、恥ずかしい、から」
「もう夫婦なのだから恥ずかしいこともあるまい。どれ、今から俺の手で解そう。肩の力を抜いて背筋を楽にするんだ。ほら。」

そう言って赤子のようにちゅうちゅうと乳首を吸ったり舐めたり擦ったりしていた彼は唇を私の耳元に寄せると足を開かせた。自分たちの吐息が少しだけひんやりとした部屋の中を暖かくさせている。息を吸い込めば自分と彼の匂いが混ざって眩暈さえしそうになる。彼の肌は熱くて、彼の言う通りもうすっかり寒さは消え失せていた。杏寿郎さんはもう片方の手で私を抱き寄せ、もう片方の手は私の秘部に置かれたまま、彼は小さく笑うと再び口を開いた。

「ああ、そこは、」
「目を閉じて、ゆっくりとそれ以外の五感を研ぎ澄ませるんだ。」

言われた通りに瞼を閉じれば仄かに朝の日差しが瞼を照らしてうっすらと血管のような薄紅色が見えた。彼の中指が入り口からヌプ、と侵入してきたかと思えば、濡れそぼったそこはいとも簡単に男の指一本を咥えこんでしまった。くすりと耳元で笑い声が聞こえて思わず羞恥に眉間にしわを寄せて声を漏らせば耳朶を不意に噛まれてひや、と声を上げた。

「俺に触れられただけで、もうこんなに濡らしてくれたのか?」
「…ん」
「可愛らしい…嬉しいな。」

目を閉じているので彼のその表情は窺い知れないが、きっとそう言ってくれている瞳は朝日のように柔らかくて美しいのだろう。見えないから研ぎ澄まされる想像と、感じる肌の感覚が一等敏感になっている。蜜壺を掻き回される度にピチャピチャと水音が聞こえてくる。目だけではなく耳を塞ぎたくなってブンブンと首を触れば、彼は笑ってそれを優しく制すると額に唇を落とした。そしてその反面私の蜜壺に侵入した指の動きを早めたり、指を折り曲げたり、トントンと奥の方を叩いてみたり、私の良いところを忙しなく突いた。

「んん…あっ、」
「腹の下に意識を持って行ってごらん。集中するんだ。そう、耳を澄ませば聞こえてくるだろう。」
「っ…」
「息を止めてはいけない。そうだ、ゆっくり呼吸を繰り返すんだ。」

いい子だな。そう一際低い声でそう言うと、頃合いを見てもう一本、ぬぷりと薬指を私の中にゆっくりと入れてクチュクチュと弄び始めた。彼はすでにびちゃびちゃになってしまったそこを更にびちゃびちゃにさせようとするその太くて硬い2本の指が恨めしくて、悩ましい。障子を隔てた外ではちゅんちゅんと雀が楽しそうに鳴いていると言うのに、この屋敷では男女の営みの音が絶え間無く聞こえているのが不思議に思えた。男の手によって溶かされ解された其処は、もうここまでくると後は雄の太くて熱くて硬いそれを欲するだけの器官と化す。それまで忙しなく胸と下半身を弄んでいた彼の動きがピタリと止まったので久しく薄っすらと瞼を開けて見た。そうすれば目の前に頬をと眦と耳を真っ赤に染めて、劣情の孕んだ双眼で私を見下ろす一人の男の顔が見えた。

「…すまない、もっと君を気持ちよくさせてあげたかったのだが、俺も限界のようだ。」

そう言って彼は視線を下げると自分の下腹部へを手を伸ばした。同じように彼の視線を辿れば、彼の下腹部に今にもはち切れんばかりの勢いでそそり立つ雄のそれを目の当たりにすることになった。彼の物は大層立派で、鍛え上げている腹筋に今にも付きそうなほどに反り返っている。若々しく猛々しいそれはもう見慣れているが、こうしてまじまじと見ると本当に立派だなあと感心してしまう。初夜にこれが入ってくると言うことであまりの大きさに驚き恐怖し涙してしまったのだが、今では私の膣は彼のこの形以外受け入れられないと言わんばかりに彼の形をきっとしっかり記憶しているくらいには体を重ねている。人体とは本当に不思議だなと思う。血管の浮き出たそれに手を伸ばす。苦しそうにするそれを優しく数度扱いてやれば、今日初めて彼が喉の奥から悩ましい声を絞り出した。其処まではしたない女であるとは思いたくないが、何しろ今はお互い余裕がない。彼の先っぽに触れればねっとりとしたそれが滲んでいてとても辛そうだった。早く繋がりたいのに呼吸をすっと整えると彼はにこりと笑って私の頬を撫でた。

「挿れても良いか?」
「はい、来て…んっ」

同じように笑ってそう言えば直後口付けをされ、足を開かされる。足の間に入っていた彼が腰を屈めれば彼の肉棒がすぐに自分の入り口に触れてグチュりと水音を発した。数度互いの溶けるようなそれらをすりつけるようにぐちゅぐちゅとこすり合わせればもう自分の愛液なのか彼のものなのかさえわからない。そのまま息を吐くのを皮切りに彼はようやく亀頭を滑り込ませた。ヌプヌプとしたその中に入れるとより一層頬を上気させ、額に汗を滲ませる。彼は慎重に優しく傷つかないようにと私の中にゆっくりと全部を潜り込ませることに集中していて、私もまたその入ってきた太く硬い熱を感じるために意識を集中させた。凹凸がすっぽりと重ね合わされると心も満たされたようでホッとする。

「全部入った。」
「杏寿郎さんの、相変わらずすっごく、大き…」
「ははは、君の“中”が狭いんだ。…解しても解してもとても締まりが良いので困ってしまうな。」
「んっ」
「それにとても熱くて気持ちがいい…。俺の形を確かめるようにぎゅうぎゅう締め付けられる。…とてもじゃないが堪らない。動いていないのにもう気を遣ってしまいそうになる…」
「動いちゃ、や、」
「むう、君のお願いでもそれは難しいお願いだな。それ以外のお願いなら全力で聞いてやるんだが…」

いつもきりりとしている眉を八の字にして彼は笑うと、ふう、と息を吐いた。そして私の頭の横に手を置くとそのままゆっくりと腰を動かし始めた。最初は奥の方でトントン、と優しく突いて、時折大きく腰が引かれたかと思えばそのままズブズブと再び大きいそれが侵入してくる。

「ぅ、んっ」
「入り口が窄んでいるのに中はトロトロでとても気持ちがいい…俺の形をもう嫌という程知っているんだな、引き抜こうとすれば名残惜しそうに絡みついてくる…」
「あんまり言わないで…」

うう、と恥ずかしそうにすれば彼は少し嬉しそうにはにかんで、それからまたズブズブと律動を繰り返す。もう目がチカチカして心拍数も上がり息を止めそうになる度に彼は私の呼吸に気づいて律動の最中に息をするように優しく忠告をする。こんなに私はいっぱいいっぱいで乱されているというのに、彼はまだまだ余裕があるのだと思うとなんだか悔しいような、やはり到底彼には勝てないのだなと思う。それが何だか嬉しいような悔しいような気がして下腹にぎゅっと力を込めればう、と呻き声のような声が頭上から聞こえてきて思わずふふ、と笑ってしまった。

「まだ俺を揶揄う余裕があるみたいだな。」
「え、ちょ、ちが」

ニッコリと何時ものように口の端を吊り上げてそう言うと彼は私の足をガッと掴んだと思えば自分の肩に私の足をかけてより一層抉るように深くを突いた。律動を早めたり、かと思えば緩慢に動いたり、ぐるぐると中を掻き乱したり、ぐるぐるトントンを繰り返されてもう頭なの中さえも溶けそうになる。眦からも口の端からもだらし無く涙や涎を出してしまってはしたなくて恥ずかしいのに、動こうとすれば子宮に絶え間無く刺激を与えられてそれ以上の動きを封じられて思考も停止してしまう。自分の体だと言うのに、ただひたすら雄を欲してぎゅうぎゅうと離すまいと蠢くあそこが恨めしい。

「んっあ、だめ、ダメなのっ…、や」
「可愛い嘘つきにはもっとお仕置きが必要か?」
「んあッ、きょうじゅろう、さっ、死ん、じゃう」
「ふふ、気持ちよすぎて死んでしまった人はいない。大丈夫だ、ほら、」
「あッ!」

突然蜜口の上部分にざらついた手が触れたかと思えば、ピンと芽を出していたであろうそこを、グリグリと押されて目がチカチカする。挿入されたままそこを弄られると抑えていた声までいよいよ止めるのが難しくなる。顔を真っ赤にして息を乱す私を気遣いながらもどこか楽しそうにしている彼の視線に見つめられて恥ずかしさを超えてもう何も考えられなくなってしまった。ゆさゆさと揺さぶられる度に自分の乳が揺れて杏寿郎さんを楽しませているのだろう。こんなに嫌らしくて乱れた姿は世界中でたった一人、彼にしか見せたくないし、見せられない。うう、と涙を流せば彼は優しく拭ってくれた。

「も、う…」
「…ああ、俺もそろそろ限界のようだ。もう我慢できん」

ちゅ、と優しく唇に触れるだけの口付けをして、それから再び口付けた後には互いの舌を絡ませる。上も下も繋がって仕舞えばあとはお互いその絶頂を駆け上がっていくだけだ。彼の首に腕を回し足を腰にガッチリと絡ませればあやすように背中に腕が回された。奥を貫かれれば息が漏れ、その度にその吐息を逃すまいと彼の舌が私の中で蠢いて捉える。

「んっんっ、あッもう、もうダメ、きょう、じゅろさんっ…」
「おいで。俺ももう、そろそろだ…」
「ぁ…」

僅かに声が漏れたかと思えば脊髄や脳にビリリとした電流のようなものが流れて、つま先がピンと張るような感覚を覚えた。まるで助けを求めるように反射的に彼の背中に回していた手に力を込めてしがみつくのが精一杯だった。直後、彼の低い声にならない吐息が漏れたかと思えば、一際ずん、と最奥を突いて、そのままピタリと密着したまま動きを止めたかと思えば、彼の肩がびくりと震えて、そのまま中にその温かいものが放出されるのだと悟った。一度ではなく二度、三度とビュルビュルと放出されたそれはきっと私のお腹をいっぱいにしているはずだ。私の瞼に口付けて何度かゆるく腰を打ち付けてそのままゆっくり引き抜かれれば、子宮には入りきらなかったらしいまだ温かいそれは彼の男根が引き抜かれるのと一緒にどぷりと蜜口から溢れたらしく、内腿を伝ってきた。

「あったかい…」

ぼうっとその様子を呆けた様子で見つめてそう呟けば、彼はふふ、と笑って、それから自身のもののあまりの量の多さに驚き困ったように眉を八の字にしていた(任務から帰ってきた後の彼は気持ちが高ぶっているのかいつも以上に激しくそして沢山私の中に出してくれる気がしている)。

「すまない…名前の中があまりに気持ちよくて、こんなに…。我ながら感心する。」

布団が台無しになった!と慌てて側の塵紙を取ろうとする彼の頬に手を伸ばせば彼はピタリと動きを止めてこちらを見下ろした。

「…ううん、むしろ嬉しい」
「ん?」
「はやく、あなたの赤ちゃんを孕みたいと思ってるから、」
「…君には敵わないな」

目の前の彼は再び耳まで真っ赤に上気させたかと思えば、私の手を取って、お帰りなさいを言った時のように嬉しそうにふんわりと笑った。


2019.11.09.
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