短編 | ナノ
ヤクザ鶴見さんとお嬢さん

「鶴見さん、紅茶とコーヒーどちらにしますか?」
「そうだな、今日の茶葉は何かな?」
「マルコポーロです。」
「そうか。じゃあ、紅茶をお願いしよう。」

マルコポーロは美味しいからね、そう言われて大人しくこくりと頷けば、彼も満足そうにウンウンと頷く。カップを温めながら紅茶を手際よく入れられるようになるには不器用な私では一月もかかったが、もう今では慣れたものだ。鶴見さんは日曜日には文化面もくまなくチェックするのだ。流されたままのテレビからはニュースが流れている。お昼のワイドショーを流すこともあれば、日曜日の特番を見ることもあるしあまり特定の番組に定めることは少ない。比較的ニュースを流していることが多い。

「今日はお出かけするの?」
「いや。たまには2人でゆっくり過ごそうじゃないか。」
「はい」

紅茶を差し出して自分もソファに腰をかける。横を向けば大きな一面の窓からは豊洲の海が覗きそのもっと向こう側にはお台場まで見渡せる。今日は雲ひとつない晴天で天気もいいが、外は存外寒く洋室の開けた窓から風の音が聞こえてくると自然と寒さが足元から伝ってくるようだった。テーブルの上の情報誌に手を伸ばし何とは無しにペラペラめくる。クッションを膝に置いて暫く黙って読んでいたが、チラと横を向けば姿勢を保ったまま綺麗に足を組んだ紳士が紅茶のカップに手を伸ばし飲み込むところであった。昨日美容室に行ったとのことでその通りに美しく整えられた髪はいつも以上に整えられている。私も美容室に行こうかな、そう言えばん?と口角を上げてすぐ傍の彼は私の髪に手を伸ばす。一房手に取り触れた。

「少し伸びたね。」
「伸ばそうと思ってるんですよ。」
「あまり切ると寒しな」
「」


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テーマ「人外ファンタジー」
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