短編 | ナノ
月曜日の月島さん改訂版

「…ただいま」
「お帰りなさいませご主人様ー」
「迎える気ゼロのメイドだな」

ソファでぐでーんとしていればどす、とお腹に思い鞄を置かれて思わずうへえと声がでた。この鞄どんだけ重いんだと思ってばっと起き上がり、再度その鞄の重さを確かめたが、PCの重みを考えたとしてもめちゃくちゃに重い。砂袋でも持ち歩いているのだろうかと思いつつ鞄をソファに下ろせば、今度は私に覆いかぶさるようにさらに重いそれがのしかかってきた。

「おっも」
「傷つくな。」
「しかもお酒臭い。月曜日から頑張りますねえ。」
「そうだよ。俺は月曜日から頑張ってんだよ。」

そう言いながら彼は私の上から退く気はないようで、はあ〜と長めの息を吐きながらぎゅっとお腹に腕を回した。営業は大変だなと一緒に暮らすようになってからますます感じるが、月島さんは本当に毎日お仕事をがんばっていると思う。泣き言は言わないし(めんどくさそうな顔はする)、仕事の愚痴は零さないし、黙ってそつなくこなす。男だなあとぼんやり思って、それからけふっと思わず息を吐いた。

「お前こそ月曜日から酒かよ。いいご身分だな。」
「1杯くらい許してよ。ちゃんとご飯と明日のお弁当作ったし、明日のために誰かさんのシャツはアイロンかけたし、新しい靴下買っておいたんですから。ご褒美ご褒美。」
「…すまん。」

冗談のつもりで言ったのだが思わず結構なマジトーンで返ってきたのでうそうそと茶化せばむくりと月島さんは顔を上げて私と目を合わせた。そしてむにゅんと人様のおっぱいに顔を埋めて微動だにしない。

「柔らか…」
「当たり前ですよ。おっぱいなんですから。」
「最高だな」
「(完全に酔ってるわ)」

眠る前にせめてお風呂に入ってもらわなきゃと思ってそろそろどいてくださいと言わんばかりに体を捩るが、この男の腕力というものは凄まじいもので、全然びくともしない。体も背は高くないのにずっしりと重くてもう月餅みたいだとぼんやり思い浮かんで思わずぷっと吹いてしまったら、不機嫌そうに眉を顰められた。思わず皺が集中した眉間にぴとっと人差し指を付けて笑えば、やはり逆効果だったのかがしりとその腕をつかまれてしまった。カラン、とグラスの中の氷の鳴る甲高い音が聞える。

「御主人様、お風呂の準備は整ってございますよ」
「…ああ。」
「汗だくじゃん。お風呂に行きましょう。洗濯機も速くまわしたいし。」

そう言って首を傾げれば月島さんはじーと私を見詰めた。テレビは24時間テレビの翌日だからか走り切った芸人の特集ばかりを繰り返している。月島さんに圧し潰されてだんだん熱くて額に汗がにじんできた。お腹も足もそろそろ痺れてきたので本気で退こうとすれば、酔っ払ってとろんとした眠そうな顔を提げた月島さんが、私の掴んだ手を離してゆっくり顔を上げた。

「…お前も入るか?」
「もうさっき入りましたもん」
「じゃあ汗をかけばいいんじゃないか」
「えっ、うっわ」

突然そろそろとお腹の方からかさかさの武骨な掌が二つ触れてきたかと思えば、ブラトップを上に捲られていた。ストップストップと言いながらその屈強な2本の腕を阻止しようと抑えたが、もちろんそんなことは無意味だった。とんでもない力だ。

「月島さん?月曜日ですよ??」
「ああ。今日も頑張ったな。」
「お疲れ様です…。」
「俺にもご褒美くれよ。」
「………」
「なあ。いいだろ?」
「………ちょっとだけ、んっ」

そう言えば月島さんはにたりと笑って、さっきまでのとろんとした目とはちょっと違う、意識の覚醒を感じるぎらぎらした目をしていたので思わずぎょっとしてしまった。月島さんは私の返答を聞き終わるか否かのタイミングでむちゅ、と唇を重ねて、キスをしながら止めていたその掌の動きを再開させたので、観念してそのままねじ込まれた舌に自分の舌を絡ませて、もう先ほどから熱を発して膨張する月島さんのそれにそろりと手を伸ばした。

2018.08.27.(続く……?)
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