短編 | ナノ
鶴見さんに甘やかされながら焦らされたい

「どうしたんだ、名前。」
「鶴見さん……」

がちゃりと控えめな音を立てて扉が開く。冷暖房も明かりもつけなかった寝室に久々に扉の外から光が差し込んできて、その眩しさに思わず目をしぱしぱさせた。扉の向こう側にいた背の高い影は私を見て目を細めるとゆっくりとした足取りで部屋に入りこんできた。そして私をようく観察し細心の注意をしながら部屋の中央にある大きなベッドまで足を運ぶと、腰を掛けた。静かにベッドが軋んで、それから彼の体重を素直に受けて沈む。目が慣れてきた様子だったが、流石に足元がこれではおぼつかないので危ないと判断したのか、彼はサイドテーブルのランプに手を伸ばしてそれを点けた。ぼんやりと明るい橙色が一瞬にして暗がりが支配していた世界に燈る。鶴見さんは四隅で固まる私を見るとうーんと小さく唸って、長くて綺麗な形をした自身の指をきつく締めていたらしいネクタイの隙間に通して弛めた。

「そんなところに居ないで、さあ、こっちにおいで」

ほら、と言いながら両の手を開いて私を迎え入れてくれる鶴見さんの方にゆっくりと身体を向けて、鼻を啜る。おいで、ともう一度小さくそう言ってにこりと口角を上げる鶴見さんを見て、バッと鶴見さんの胸に飛び込む。被っていたブランケットが宙を舞い、それから絨毯の上に落ちた。ぼすっと体が鶴見さんの胸の中にフィットして、自分の両腕をぎゅうと鶴見さんの首に回せば、彼のいい匂いを肺一杯に吸い込んだ。
頭の上からふふっと笑う低い声が聞えたかと思えば背中にぎゅっと日本の暖かくてがっしりした腕がまわった。鶴見さんが腰かけたベッドのスプリングがぎしぎし軋む音がする。彼の膝の上に座ってぎゅうぎゅう抱きしめていれば、部屋の隅に居て冷え切っていた肌がどんどん熱を帯びていくようだった。鶴見さんの肩に頭を載せて、それからすんすんと彼の香りを嗅ぐように鼻筋で鶴見さんの首をなぞって、それから首に顔をうずめた。いいにおいがする。鶴見さんの香水の香りと、鶴見さんが使っている整髪剤の香りだ。つんとするようなものは決して使わない彼のこの香りがとても大好きだ。私が面白いくらいに甘えるのがそんなに可笑しいのか、くつくつ喉を鳴らすと、鶴見さんは自分の首に顔をうずめる私の耳朶に唇を寄せて、それからちゅっと軽く口づけながら口を開いた。

「名前は本当に寂しがり屋だな。」
「…約束破ったの鶴見さんの方でしょ。」
「まさかこんな遅くなるとは思わなかったんだよ。許してくれ。」
「鶴見さんは人気者ですね。」
「ある程度の地位に行くと接待されなければならないこともあるんだ。私だって行きたくて行っているわけではないんだよ。」
「…はい。」

私が小さく返事を返せばははっと鶴見さんは笑って、それからはあーっと息を吐くと私を抱きしめたまま後ろにごろりと倒れた。必然的に私が上になって、それから鶴見さんが下になる。お洗濯して変えたばかりのシーツのこすれる音と、太陽のいいにおいが鶴見さんの吐いた少しお酒の香りを帯びた色っぽいと息が相まって少しだけくらくらした。ブランケットの下は下着だけをまとっていたので、晒された背中が少しだけ肌寒かった。よいしょと自分の体を動かして上体を起こせば、鶴見さんを今度は見下ろす形になった。橙色のランプの下で彼のお顔が浮かびあがる。弛めたネクタイや、隙間から覗くその鎖骨や首筋がとても色っぽい。女の私がうっとりとしてしまうくらいだ。鶴見さんの着ているスーツがくしゃくしゃになってしまうのがちょっと心配だったが、彼自身はそんなこと微塵も心配している様子はなかった。暫く鶴見さんは瞼を閉じて呼吸を繰り返しながら私の大腿を優しく掌で撫でていたけれど、ゆっくりと瞼を開けると、視線を私に向けて歯を見せた。

「随分かわいい下着を着ているね。」
「こういうの鶴見さん好きかなって。」
「好きだよ。それに良く似合っている。ありがとう。」

そう言って両の手を私のおっぱいに手を伸ばす。おっぱいを包み込むようにやわやわとその柔らかさを楽しみながら、可愛い黒のレースを指先でなぞる。すけすけのベビードールなんて私の趣味ではないけれど、鶴見さんに喜んでもらえるかなあなんて淡い期待を込めて選んでみた。普段はブラトップに短パンという夏の少年みたいな恰好をしているからこういう格好をするとお互いとてもドキドキする。レースにすけすけでブラも無いからレースの隙間からぽっちりと乳首は見えるし、下は履きなれないTバックとガーターベルトで鶴見さんのお膝と自分の足がこすれるだけでも子宮の奥がじんじんしてきて思わず湿っぽいと息が出てしまう。

「いつからこんないやらしくなってしまったんだ?名前」
「ん、鶴見さんの、せい、」
「それはそれで嬉しいな。どれどれ、もっとようく見せてくれ。」

そう言って鶴見さんは服を着たままで私に上体を倒すように手を背中に添えると、そのままゆっくりと自分の方に引き寄せた。自然と私のおっぱいが鶴見さんのお顔のほうに寄せられて、鶴見さんはレース越しから既にぽっちりと主張していた乳首をぺろりと舐めると、そのまま唇ではむはむと噛んでみたり、優しく吸ったり、不意に強くちゅう、と吸ったりして悪戯を始めた。鶴見さんのお髭が時折当たってこしょばゆいなあと思っていれば急にもう片方の手で空いていた方の乳首をぎゅっとつねったりしてくるので思わずあっと声が漏れてしまうのだった。鶴見さんが私のおっぱいで楽しんでいる間、私は彼の頭上で両の腕をベッドについて、ぎゅう、と枕を掴んでそのこしょばゆさと気持ちよさに耐えながら、顔をベッドに押し付けてふうふうと荒く息を吐きながら声を我慢していた。直接ではなくてレース越しに愛撫されるのが凄くいやらしようなもどかしいような気がして、頭の中までぐずぐずに溶けてしまいそうな感覚がした。

「ああ、こんなに濡らして…」
「…ごめんなさい」
「私のズボンまで染みてしまったね。」
「うう…」
「まるで雨のようだ…しょうがない子だな。」

徐に鶴見さんが指を私の下半身に伸ばしたかと思えば、ずいっともう下着の意味さえ最初からなしていなかったパンティの紐を指で絡めた。案の定私のあそこはぬるぬるに濡れていて、かつ今日はTバックだったことも忘れていたのであっという間に鶴見さんの素敵なスーツのズボンを濡らしてしまった。ごめんなさいと謝ればぽんぽんと背中をなでられてしょうがない子だなと宥められた。でも顔はにやにやととっても楽しそうに笑っているので、勿論怒ってなどいないことはわかっている。鶴見さんは体を少しだけ動かして私のTバックの隙間から指を差し込むと、そのままとろとろした私の中に侵入を試みようとゆっくりと指を中に差しいれた。もちろんその間も私の乳首やおっぱいの執拗な舌の愛撫も再開されてしまい、私はまただらしなく声を上げる羽目になってしまった。ぐちゅぐちゅとまだ鶴見さんの指一本しか入っていないのにとろとろに溶けているのが分かるほど滴っていて、鶴見さんは楽しそうに奥へ奥へと指を進めるのだった。先程からお尻に鶴見さんの固くなった熱が動くたびに当たってすごくもどかしい。鶴見さんもようやく息を乱し始めていて、頬を上気させていた。鶴見さんがこういう表情をするのは本当に珍しい。いつもセックスをするときも飄々として息を乱すのは最後のあの瞬間くらいなのだが、本当に随分この下着を気に入ってくれたらしかった。

「ん、鶴見さん、」
「名前はここが気持ちいんだよね?」
「んふう、んっん、きもちい、」
「ほうら。また溢れてきたよ。嫌らしいね。」

いつの間に指が2本に増えていて、私はいとも簡単に彼の太い指を2本も容易く迎え入れるくらいには溢れていたのだと思うと恥ずかしさでどうにかなりそうだったけれど、今はもうそんなことを真剣に考える暇さえないほどにもっともっとと気持ちよくなりたくて、鶴見さんが欲しくて欲しくて、早く早くとあそこをはくはく脈打たせる事で精いっぱいだった。

「鶴見さんの、ほ、しいのっ」
「そうだな、あともう一回いい子でイってくれたらそうしよう。」
「あっ、」

ぐちゅぐちゅとあふれ出る密壷でぐりぐりと指を曲げたり奥までずるずると差したり抜いたりしていれば、足の先までびりりと電気が走っていくような衝撃を感じる。鶴見さんは唇で乳首を食んでひっぱったりして意地悪をしてくるのも忘れずに上も下も悪戯を施してくるので、あっという間に私はびくびくと震えながら意識を飛ばしてしまった。ハアハアと肩で息をする私にお構いなしに鶴見さんはようやく指を私の膣からずるりと抜くと、私を見上げながらまるで見せるように私の愛液でどろどろにふやけて濡れてしまった2本の指をぺろりと舐めた。私はアクメの余韻を感じて上気する頬の熱を感じたままぼうっと鶴見さんのお顔を見ていたが、それもつかの間、鶴見さんはぎゅっと私を抱くと、ぐるりと状態を反転させた。今度は鶴見さんが上で、私が下になった。

「ふふ、私が欲しくてたまらなそうな顔をしてるな。」
「つるみさあん…」
「まあ、そう焦るな。夜はまだ長い。」

そうだろう?とでも言いたげに鶴見さんは舌なめずりをすると、ひとつひとつ艶めかしい手つきでシャツのボタンを外していった。


2018.07.15.



つづく…?
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