look

015

 金髪というよりプリンに近いそれは、彼がどれほど忙しいかを示している。ほうけたような塚本を見ながら、転校生がどれほど掻き回してくれたかを実感した。

「…あー、なるほどねぇ。よーくわかったぁ」

 どこか呆れた表情で大河を睥睨する塚本。大河が理由を問えば、今度は頭を抱えた。大河は、それを横目に溜まった書類を処理していく。

「直樹。ほら、あとは生徒会に戻せ」
「え、あ。ありがとぉ」

 用事は済んだはずだが、塚本はまだ大河の前に立っていた。呆れと憐憫と、そして少しだけ楽しむような、そんな色を含んだ目。
「光ちゃんに、会いに行きたい?」
 迷わず首肯する。やつの謹慎期間中に溜まっていた書類を処分するべきだと委員に主張され、自室にいる光に会うための大義名分も使えないために、まだ話をしにいっていないのだ。

「でもさぁ、個人的に会いに行くのは、ちょっと危ないんじゃないのぉ?」

 大義名分が使えない今、そうすれば職員室前の廊下で起きたことと似たようなことが起こるかもしれない。

 大河は、風紀委員長という肩書上、正式なものは認可されていないものの、親衛隊を持っている。非公認のそれだが、隊長や幹部との交流や隊員たちへのサービスも気まぐれにする程度には、関わりがあった。ただ、大河自身は、あまり積極的に関わろうとはしていない。

「そもそもさ、なんで声かけたのぉ? 職員室前なんて、人目あるとこでぇ。大河なら、わかってるでしょぉ」

 あまり親しくしていれば、親衛隊からの警告が入る。酷ければ、制裁だ。特に、今は転校生の件があるために、似たような状況である大河と光の関わりはあまりいいようにはとられない。

「あのときは…勝手に身体が動いて」

 逆代先生と親密な空気で笑う光を見て、焦がれるような苛立ちを抱えた。声が滑り落ちるように零れていた。ただ、誰かと親しくしているだけで、こちらを見てほしいと願った。大勢の前というリスク、それが与える結果を一瞬でも忘れてしまうぐらいに。
 今までにない感覚。
 光の、平凡と言われる顔が、優しく笑いかけてくる。そうされるだけで、彼と会うだけで。

 ああ、これは。

 頬に熱が集まる感覚。塚本が、そこにチェシャ猫のように笑いながら注視している。その視線に、大河の机からボールペンが飛んだ
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