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014
あれは、完全な事故。監視カメラの映像で、転校生の前方不注意が原因だと判断された。転校生は、今、謹慎処分に処されている。前方を確認せず全力で走るという危険行為を行ったこと、今までの暴力沙汰や備品破壊を加味した結果の判断だった。下記の者を三日間の謹慎処分に処す。
一年A組、坂野裕也
謹慎処分の知らせを目にして、大河は、転校生の事情聴取を思い出した。
彼は、風紀の取り調べ室に連れてこられたにも関わらず、まったく別の事を叫び続けた。大河にむかって「仕事より遊ぼう」「学生は遊ぶのと勉強が本分だ」と喚く。話すように促せば、転校生は自身の無罪のみを主張した。なんのために連れてこられたのか全く分かっていない。
結局、取り出すことに時間がかかったものの結果が確実にでる監視カメラの出番となった。
しっかり会話まで録音されていたそれの内容を思い出し、さらに機嫌が降下していく。
「大河ぁ。この書類なんだけ…ちょっとぉ」
「ん」
「なぁに、その皺ぁ。今までにないくらい絶壁じゃんかぁ」
眉を下げ、面倒だと大きく顔に書かれたような表情の塚本。彼から渡された書類に目を通し、認可印を押して返す。
「転校生のことを思い出してな」
「あー、大河ってば、めちゃくちゃ狙われてるもんねぇ。あれに付きまとわれるのは苛々しちゃうよぉ」
「…それは、まぁ、どうでもいい」
転校生は、なぜか大河を気に入っている。大河が、生徒会室へ入ろうとした一般生徒である彼に声をかけたときからだ。追いかけまわされ、名前を呼ばれ、一緒にいてやると上から目線で押し付けられる。確かに面倒だったが、回避するだけの十分な脚力も頭もあったため、問題なかった。
普段から口を動かすことが多い塚本の声が聞こえないことを不審に思い、彼を見る。
口をぽかんと開けたままの塚本。彼も、それなりにかっこいいと噂され、親衛隊を持つほどだが、今の顔は、少々不格好だった。
「いやいやいやいや、大河、めっちゃ不愉快だって言ってたじゃんかぁ!」
塚本が身を乗り出して叫ぶ。