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006


 転校生と云う嵐が訪れてから四か月が経った。生徒会のほとんどが仕事を放棄した、この状況を打破するため、風紀委員の仕事は日夜忙しさを極めている。

 生徒会室に比べ、華美なものが一切取り払われ、実務的な風紀室。何人もの風紀委員たちが血眼になって仕事をこなしていた。
 平の風紀委員は、それぞれ制裁への対処と保護対象となっている人物の警護と転校生が起こす乱闘や器物損壊の処分などで忙しい。

「その中で、オレってば証拠集めもしてるのぉ。リコールのためにぃ」
「すごいですね! いつもお疲れ様です」

 感心したように光が声を挙げて褒めれば、塚本は、光には見えないことを知りつつ胸を張る。それでも、光が笑ったことに、相手の雰囲気や音から相手を予測することの器用さを改めて思い知った。

 自身の担当を終わらせた塚本は、頭撫でてぇとわざとらしくすり寄る。チェシャ猫のような三日月を浮かべつつ、横目で見やるのは、風紀委員長その人だ。大量の仕事の山に囲まれた大河は、殺気立った表情で塚本を睨む。
 ばすっ、と少々間抜けな音が、大河の頭から聞こえた。なんだろう、と光は、そちらに注意を向ける。

「男の嫉妬は醜いから、黙ってさっさと仕事を終わらせようね」

 梓だ。ご覧のように忙殺されている風紀をサポートするために頼まれ出張している。光は知らなかったが、実は、梓は非常勤講師であり本来の仕事は少なめだという。それを理由になぜか風紀と生徒会のサポートという厄介ごとを押し付けられたらしい。

 渋々仕事のスピードをあげる大河に耐えきれず噴出した塚本。それを聞いた大河の眉間に皺が増える。しかし、爆笑も梓の一言で消える。自主的に仕事増やしたいみたいだから追加しといたよ、と爽やかに塚本の机を示したのだ。

「あの…俺、お茶淹れましょうか…?」

 筆記具が紙を滑る音、キーボードを打つ音、扉一枚を隔てて取り調べらしい会話が聞こえる中、光は居心地悪そうに申し出る。

「ダージリンくれる?」
「オレンジがいいなぁ」
「昆布茶ください」

 一斉にあがった声。それを聞いて反復しつつ、光は給湯室へ入っていった。

「光ちゃん、なんか慣れてるぅ…?」

 塚本のさりげない名前呼びに眉間の皺が増えた大河が答える。

「迷惑かけるからって、風紀委員が来る前に場所を覚えたんだよ」
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