竹くずし

002


 体を這いまわる何かに、目が覚めた。自身の身体を見れば、肌色の胸部に腹に内腿に細長い何かがするりするり撫でていた。
「ひッ」
 見た事のないそれは、触手というものが一番近いのだろう。急所を隠すものがなく、漠然とした恐怖に剥ぎ取ろうと身じろぎする。だが、体が動かない。這い回るものより数倍太いそれが、しっかりと手足を固定していた。
「なん、だよ…なに、これ…」
 声が震える。どれだけ力をいれようが、トウカを縛る触手はびくともしない。それどころか、トウカが目覚めたことを感知したらしい他の部位の触手が蠕動しながら動きを速めた。するりするり。脇腹をなで、鎖骨をなぞり、胸の飾りを掠める。腿の内側を薄くついた筋肉の窪みを丁寧に撫でさする。
「うあ…ッ」
 陰茎に何かが触れた。細いそれが巻き付いて、裏筋を撫でる。小さなそれから何かを分泌しているらしく、少しずつ水音が大きくなってきた。袋も小さな手で揉まれているようで妙な感覚を覚え始める。
「やめ、やめろ…ッ」
 気持ち悪い。何をしたいのか触手に体中をまさぐられている。植物相手に何を言っているのか。それでも掠れた声は漏れていく。恐怖が視界を狭めていく。どうにか動けないか。両手両足にあらん限りの力をこめているのに動けない。
 ふと、耳元で水音が響いた。そう思った瞬間、口の中へ大きな何かが突っ込まれる。
「んむッ」
 それは、入ったと同時に何かを飲ませた。トウカの咽喉の奥へ直接注ぎ込んでくる。そして、じゅぼっと音を立てて抜けた。それと同時に反射的に噎せて咳き込む。薄く目を開けて確認すれば、ねっとりとした粘膜をまとった触手が、トウカの顔を確認するように揺れていた。てらてらと濡れひかるそれが男性器のような形に見える。
 怖い。口もないのに、触手が笑ったような気がした。
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