メメント・モリ

この季節になると、この夜の風を感じると、いつも思う。
私といずれで会う誰かが何処かで泣いているのではないかと。それも、堂々と声を張り上げて泣いているのではなく、さめざめと声を殺して泣いている、そんな気がしてならない。
お前のお得意の妄想だろうと言われてしまえば、それで終わってしまうことなのかもしれない。
そう言われても、私は夜毎思う。泣いているあの人のことを。
もしかしたら、もう会ったことのある人なのかもしれない。二度と会うことのない人なのかもしれない。過去の私かもしれない。誰であろうと泣いているのだ。顔を両手で覆ってさめざめと。
私には何もできない。抱きしめてあげることも、「大丈夫だよ」と言うことすら。
その代わりに私は想う。その人のことを毎日想う。想うだけでは何もならないかもしれないけれど、人にとって最大の罪は忘却だと思うから。私は忘れない。そして、毎日想う。

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