×したのはあなたじゃなくて、

春から夏に向けての空気が徐々に変わっていく様が嫌いだ。
あの生ぬるい空気が頬を撫でていくのがたまらなく気持ちが悪くて仕方がないのだ。
夏になると、体を蒸発させるかのように暑さと、私の体を蒸し殺すような湿度に悩まされるので、それはそれで嫌なのだが。
それはさておき、あの生ぬるい空気のことである。私が子供の頃に生意気にも四谷怪談や雨月物語などを読んだせいだろうか、私には生ぬるい空気の奥には何か得体の知れないもの黒々として澱んでいるものがが潜んでいるような気がしてならないのだ。
そして、その黒々として澱んでいるものは、私に直接何かをしてくるわけではない。直接的には。ただ遠くから私が堕落して様をにやにやと笑いながら見ているのだ。私が日々堕ちていく様を楽しみに待っているのだろう。
私は、それを見たことはない。なのに、どこかで見たような気もする。もしかしたら、そいつは…

title by はいから

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