真空想

「私、シンクに水垢がたまっているのが好きじゃないのよ」
「カーペットに髪の毛が落ちているのも嫌いなのよね」
理由はそれぞれだけど、彼女はいつも俺の部屋をぴかぴか!?してくれた。
所詮は男の独り暮らしだしアパートには寝るために帰っているようなものだから、掃除なんてろくにしなかった。
そんなおれにとっては、なくてはなはない彼女だと思う。彼女が掃除好きなこと=彼女ができて良かったと思う理由なんて言うと、言い過ぎだけれども、彼女の有り難みを感じる毎日だ。

 この前突然母親がきた。「ろくに帰りもしないで…」とか「ちゃんとやっているの?」なんて文句を言いながら俺の部屋を物色した後に、急に振り反って笑顔で「彼女ができたのね」と言ってきた。
 勿論俺から言ったわけじゃないし、彼女の写真が飾ってあったわけでもない。不思議だなー、女の勘ってやつかな?と思って、友人に相談すると思わぬ答えが返ってきた。
「あれだろ?別にきれい好きでも何でもないお前の部屋が、きれいだから気づいたんだろ?」
「そうかなー」
「まあ、そうだって。女の中には、リップクリームとかそういった女が使うようなのを彼氏の部屋に置いて、自分の存在をアピールしたがる奴もいるけど、お前の彼女は違うんだな。お前の部屋をきれいにすることで自分の存在をアピールする。そっちの方がいいんじゃね?」

 確かにこの部屋にいると彼女の掃除をしている姿が目に浮かぶ。そうやって彼女の存在を思い出すのは、悪い気がしなかった。





title by アセンソール

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