贋作の私でよければ


「良かったのよ、これで良かった」
姉の色を失った唇が小さく呟く。何がいいものか。私はそう思ったのに何も言えなかった。
私と姉は、姉の方が出来がいいどこにでもいるような双子だった。姉は両親の自慢だったし、私にとっても姉は自慢だった。
しかし姉は、儚くなった。
その日から、私は姉の模倣品となった。皮肉なものだ。姉が生きている時ではなく、死んでから模倣品になるなんて。
私は姉の化粧品を譲り受け、毎日毎日化粧をした。姉が生きていた頃は化粧なんて全くしなかった私が毎日化粧をするなんて誰が想像しただろうか。
姉のお気に入りの口紅をつけて大学に行く。
ある日、友人を通じて呼び出しを受けて告白された。
「好きです、付き合って下さい」
人生で初めて告白されたというのに、私の心は驚くほど冷めきっていた。

「私の双子の姉が死んだのはご存知?」
「あ、はい」
「私と姉、どちらが美しいかしら?」
「それは……貴女です」
「……そう」
私は彼を振った。
私は姉の模倣品。姉より美しくてもいけないし、劣ってもいけない。

title by亡霊



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