小指贈れど春は来ず


 空の青さが絶対だと信じていたあの頃はもう遠い日で、今更取り返そうにも代償が大きすぎる。
 君は知っていたのかもしれない。僕らの青春は遠いもので儚いもので一瞬でしかなかったことを。

 僕たちの青すぎた春は一瞬でしかなかった。就職難と言われるこの時代で、良い就職先に巡り合う為に、いい大学に入らなければならないと言う焦燥感が僕らを駆り立てた。そしてその焦燥感から僕と君は毎日勉強をした。僕と君は付き合ってはいたけれども、結局していたのは勉強ばかりだった。僕は迫り来るセンター試験のための勉強に追われていて(勿論君だって勉強に追われていたのだろうけれども)君との関係性なんて気付きもしなかった。ドラマでよくあるようなすれ違いのカップルだったのだろう。それでも、僕は何も気がつかなかった。
 センター試験で良い点数が取れたと喜ぶ僕の隣で君はやけにすっきりした顔で僕に言ったね、「わかれよう」と。
 僕は君が何のことを言っているかわからなかった。ただ、僕が何かをしてしまって、その過ちがもう取り返しの聞かないことなのだろうと言うことだけが頭をよぎった。
 今思えば、君を引き止めればよかったんだ。「わかった」なんて聞き分けのいいことなんか言わないで素直に「わかれたくない」と言えば良かった。
 僕の、僕たちの過ぎてしまった春はもう戻らない。




title by 風雅




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