繰り返し傷付ついてみせて

 僕が君に話をしている間、君は手を組み合わせている。それは何かに対して祈っているような姿にも見えて、僕は時々訊ねたくなる。「何を祈っているの?」と。
 君は答えてなんかくれないだろう。きっといつもみたいにはぐらかす。そうに決まってる。
 僕たちが出会ったのは町外れの教会。無宗教というよりも何を信じたらいいのかわからないこの国に在ることがとても可哀想なカトリック教の教会。教会には厳粛な神父様と幾人かのシスターがいる。
 僕も何を信じ、何に対して祈ったらいいかわからない人間の一人。暇なときにぶらりとこの教会に来ては、マリア様とイエス様のステンドグラスを見上げている。
 僕は君をこの教会で何度か見かけた。その度に君は違う男と一緒にいたね。そしてイエス様を信じ、その教えをわかって貰おうとその男たちに一生懸命に話していた。
 僕が気になったのは、君がいつも違う男といたことじゃないんだ。気になったのは、君がいつもどこかしら傷を作っていたこと。君はきっとその男たちに暴力を奮われていたんだね。でも君は神様を信じ、男たちを信じた。けれど、君は裏切られ続けたんだね。神様が君を裏切らなかったかどうかはわからない。けれど、男たちは君を裏切り続けた。それでも君はまた男を愛そうとする。

 あの日僕は何て君に声をかけたんだっけ?もう忘れちゃったな。良い天気ですね、とかどうでもいいような内容だった気がする。まあ、とにかくあの日君は一人で教会にいて、僕は声をかけるなら今しかない、そう思ったんだ。
 そしたら君は僕にイエス様の教えを説明してくれたね。それからだ。僕たちがこうやって教会の外でも会えるようになったのは。


 僕は君に会えるようになって、君のために何か面白い話が出来ないかってそればかり考えるようになった。自分でも時代遅れかなって思った冗談を言ったときに笑った君の笑顔が、とっても可愛かったから。でも君はいつも同じ話ばかりする。「今度の人はきっと良い人。礼拝にだってきっと一緒に行ってくれるわ」と。
 僕は時々思う。君は傷つきたいのかなって。だって目の前に……まあいいや。君は君を傷つけるような人を選んで付き合っているんだもの。
 予言じゃないけどさ、君はまた傷つくよ。傷つけられるよ。でも君はまた信じるんだろうね、神様と男たちを。


title by 酸素
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