ひとひらの懺悔

 喉がいがいがする。風邪ひいたかなー。うがいしようかなー。
 ピンポーン。
「ん?」
 風邪ひいているのに、誰が来たんだよー。
「はーい」
 玄関の扉を開けて後悔した。
「た…頼みがあってさ…」


 高校以来の友人。顔良し頭良し性格良し。文句も何も出ないような奴だけど
「なー頼むよー」
 ただ問題が1つ。
「あんた今回で何度目さ!!」
 浮気が大変お好きであるということ。
「えーと、」
「数えんでいい!!」
 こいつに頼まれて私の友達を紹介しちゃったら、なんと私の友達もこいつのことを好きになってしまい、付き合うことになった。
 始めは幸せそうな友達を見て、我ながら良い仕事をしたもんだなと思ったけど、数ヶ月後突然友達から泣きながら電話があった。「私の彼氏が浮気をしているかもしれない」と。
 私がこいつを問い詰めたら、あっさり浮気を認めた。私はこいつを責め、二度と浮気をしないように約束させた。しかし、二度目も三度もこいつは私の友達を裏切り続けた。結果的には、友達はこいつの浮気を知り、私が二人の仲をとりもつようになっていた。
 このままでいいんだろうか。私はいつも悩み続けた。友達とこいつを別れさせて、友達には早くいい人を見つけてもらった方がいいんじゃないかと思い続けている。 しかしこいつは謝りさえすれば、友達がこいつを許し、また付き合っていけると思っている。
「……わかった。もう今回限りだからな」
 情に押されて、友達に電話をした。
「あ、もしもし?堅田だけど。うんうん。久しぶりー」
 いつも通りの会話を繰り返した後、本題に移った。
「そういえばなんだけどさ、最近彼氏とどう?」
 何でもない会話のように言ったつもりだったけど、もしかしたら声が震えていたかもしれない。
『………』
 さっきまで明るく話していた友達が黙り込んだ。
「ん?どうかした?」
『……あの、さ……』
「うん?」
『前にあの人浮気して、堅田通して謝ってきてさ、もう浮気しないって約束したじゃん』
「うん」
『でも……』
 今回のことも友達は気づいているんだ。
「また?」
『うん』
 涙声の友達に申し訳なくなる。私が紹介しなければ、友達とあいつが会わなければ、友達はこんなに辛い思いをしなかった。
 ちらりとあいつを見れば
「あはははははは」
 お笑い番組を見て笑っていた。私が何とかするから万事大丈夫だとでも思っているのだろうか。頬のひとつでも張り飛ばしてやりたくなる。だから、私はあいつが望んでいるであろう言葉とは違う言葉を言った。
「今ユキコが思っていることがユキコにとって一番だと思う」
『……わかった』
 ユキコは鼻をぐずぐずとすすりながら電話を切った。多分私の思いは通じた。
 電話を切った私を見てあいつは笑った。今回も私が友達とあいつを上手く取り持ったと疑わないで。
「電話はした。早く帰れ」
 あいつは問題は片付いたとばかりに急いで帰っていった。
「ふう」
 風邪のせいか頭痛がする。明日か明後日か、近いうちにあいつが怒鳴り込みに来るだろう。「ちゃんと取り持ってくれるって言ったんだろ!?」と。そのことを考えると頭痛が酷くなった気がする。
「自業自得だ」
 全ては自業自得だ。


title by 酸素
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