優しい手は私を焼き尽くす

 寒空の下、部活に打ち込む学生たち。ご苦労なことだよ、と高みの見物をさせてもらっている。
 青春という短くも儚い、けれど誉れ高い時をどう使うかなど個人の自由だ。寒いグラウンドで1つのボールを追いかけ回そうがどうが。


「あら熱心に彼氏の雄姿でも見てるの?」
 同級生がからかうように言う。
「……」
 黙っていれば、同級生は私を更に挑発するように言う。
「ほら、あなたの彼氏サマもあなたを見てる」
「……」
 確かに私の『彼氏』などというものもグラウンドで部活をしている。しかし、あいつは私を見てはいないだろう。
 あいつから『告白』なるものをされたとき、私はこれが告白というものなのだなあと「ふむ」と頷いた。あいつは、その言葉を付き合うことを了承した言葉だと思ったらしく、周りに私と付き合うことになったと公言した。その結果私とあいつは『彼氏と彼女』という間柄になったらしい。
 付き合っているといっても、あいつは私が読書を楽しんでいるときにまとわりついてきたり、共に下校するだけだ。あいつはそれ以上を望まないと言った。私は何も望まない。それを同級生はうらやましく思うのだろうか。
 何も言わない私にしびれを切らし、同級生は去って行った。
 私が寂しいとき、苦しいときに一緒にいてくれるあいつは……。あいつは、本当は私に何を望んでいるのだ?……
 声にならずに空中をさ迷った。

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title by 狼傷年
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