枯れていく季節に

 庭の花が枯れた。そりゃそうか、水もろくに上げてなかったもんな。
 うだる暑さの中扇風機もつけずに庭を眺める。庭といっても、猫の額ほど狭い庭のくせに、気まぐれで植えたよくわからない植物が生い茂っているただただ荒れ果てているものだが。何を勝手に枯れているのやら。植えるだけ植えて世話すらしなかったのに失望だけが胸を占めた。
 父さんが死んだ。母さんも死んだ。生きているうちは父さんにも母さんにもいろんなものを買ってあげたし、介護だってしてあげた。なのに、父さんも母さんもあっけなく死んだ。
 父さんと母さんが相次いで死んだあと、思った通り悲しいとかつらいとかそういう感情は一切なかった。あったのは失望。こんなに良くしてあげたのにあっさり死んでしまうなんて。そりゃあ、生きている間は、ありがとうと何度も言ってもらえたし、私を自慢の娘だと言ってくれた。それでもあっさり死んでしまったのだ。
 人間はいつか死ぬ。それが遅いか早いだけだ。この世に命あるものは必ず死ぬ。動物だって植物だって。だから、私が介護していたからと言って、父さんと母さんがずっと生き続けるだなんてそんな傲慢なことは考えていなかった。予めわかっていたこととはいえ実際に二人が死んでしまうと失望した。
 自分勝手な考え。私もそう思う。私が関与することで命の長さが伸びるはずもない。そんな命をコントロールするような真似できるはずもない。それなのに私は何を期待していたんだろう。
 古びた木の縁側に横たわる。ごつごつとした木が私の体を受け止めている。夏のにおいがする。噎せ返るほどの熱気をひとは生命力などというが、私はその逆、その熱気で声明を殺してしまうと思っている。父さんが死んだのも母さんが死んだのも暑苦しい夏だった。庭の花が枯れたのも夏である今。花は夏のせいだけではないが。枯れた花も父さんと母さんのところで綺麗に咲いているかもしれない。
 次は何に期待しようか。
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