ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン
このチャイムの鳴らし方は、大方あいつだろうと思い、はーい、と言いながら玄関をあけた。やはりそこには見慣れた幼なじみが立っていた。
「よう、どーし…た…って、今日は珍しい組み合わせなんだな。」
無言でつったっているレッドの後ろに、ひょこひょこと落ち着かない奴らが二名ほど。一人は俺の周りをちらちらと見ているし、もう一人は俺と目があったと思えば、すぐに逸らしてしまった。
「シルバーとゴールドにレッドと……今日は何かあるのか?」
扉が閉まらないように抑えながら思考を巡らせるが、思い当たる節がみあたらない。正月は終わったし、誕生日でもない。バレンタインデーはまだ先だし…もらえる、とも思ってはいない。
うーん、と首をひねっていると、目の前に袋とお面を突き出された。
「…………これ。」
「豆?」
「………。」
無言でコクリと頷くレッド。
ああ、節分か。とそこで初めて理解したが、どうして俺の所に来たのか。
「俺んちでやるの?」
「………ん。」
「まあ…いいけど。」
掃除が大変じゃないかと思ったが、イベントは嫌いじゃないので三人を招き入れることにした。
ゴールドは何度か家に招き入れたことがある(仮にも一応彼氏である)が、シルバーは初めてということもあって、幾分挙動不審なようであった。
四人分のお茶をいれて、椅子に座り、少しの談笑。
「さー…て、と。やりますか?」
「そうっすねー!」
ゴールドが軽快な相づちをうち、残り二人がこくこくと頷く。
鬼は誰がやる?と切りだそうとしたとき、右腕に何かを突きつけられた。
「あのー…レッドくん?」
「何?」
「これは?」
「お面。」
「え?どうゆう…?」
「グリーンが鬼。」
嫌だと言う暇もなく、お面を被せられてしまい、俺はどうすることも出来ないまま鬼役をつとめることとなった。
そもそも、なぜ家の主が鬼役をして外に出されないといけないのかと、腑に落ちなかったがそこはしょうがない。心なしか三人が楽しそうに見えたので、よしとしよう。
「じゃあ、始めようか。」
やるからには全力をつくすのだ。
全力で鬼役っていまいちわからないけど、とりあえず多少痛くても我慢だと思う。
「鬼はー外!福はー内!」
ゴールドとシルバーが声を揃えて、豆を投げる。
ぱらぱらと音をたてて床に豆が転がるので、踏まないように気をつける。(踏んでしまっては食べられない!更に掃除に手間がかかる!)
「グリーンはー外!ピカチュウはー内!」
「違うだろ。」
明らかな悪意を感じるレッドの言葉に突っ込みを入れながらも、豆を受け続けていたのだが…。
バチン!
…豆と思えない音が鳴り、微かにでこが痛い。
「……ゴールド、てめぇ…。」
「わわわっ…わざとじゃないっす!グリーン先輩すみません!!」
「許さねー。」
「だからすみませんってば!こう…ほら、あのー…モンスターボールの勢いでシュッて……シュッて投げちゃったんですよー。」
モンスターボールを投げる格好の真似を何度も繰り返し、言い訳を続けるゴールド。
お面を外し、豆とボールを一緒にするな、一喝しようとした時だった。
「グリーン…おでこ赤い。」
レッドがぼそっと呟く。
それとほぼ同時に、俺は両手でおでこを隠し、ゴールドは俺をみて爆笑。いつの間にか、豆まきから離脱して恵方巻きを頬ばっていたシルバーは、笑った結果喉に米を詰まらせたらしくむせている。
「お、ま、え、らあああ!!!」
でこを隠したまま怒るが、笑いはとまらないし、俺は恥ずかしいし、なんだかどうでもよくなってきてしまって、俺まで訳も分からずに笑ってしまう始末だ。
「もー…グリーン先輩、可笑しすぎますよ。」
「誰のせいだ、誰の。」
「ゴールド、お前…っく…ちゃんと…っふ…謝れよ……くく。」
「シルバーだって、爆笑したじゃんか!てか今も笑いこらえられてないし…ぶはっ。」
みんなで、ひろった豆と買ってきた恵方巻きを食べながら話をする。まだまだ笑いはおさまらない。
「…来たね。」
レッドが一言いう。
「何が?」
と聞き返すと、こう言った。
「福、だよ。」
確かに、みんな笑顔だった。
笑う角には福来たる
鬼は外、福は内。
(鬼もいつしか、笑い顔。)
END
ついったの診断で、節分の配役というのがあったので、やってみたら、「レッドさんが豆を買ってきて、グリーンが鬼で、ゴールドが豆をまいて、シルバーが恵方巻きを食べる。」みたいな診断だったので、書いてみました。