君の存在が怖い。
バトルが強いとか、怒ると怖いとかではない。(たぶんバトルは僕の方が強いはずだし。)
僕は、きみが、パリンっと割れてしまうガラス細工のようで怖いのだ。
ぱりんっ
そう思ったのは、もう数年前になる。幼なじみの君と僕が同じ道を歩み、同じ目標に向かって頑張っていたころだ。
僕はロケット団を壊滅まで追い込んだ。バトルをして勝って、またバトル。僕の相棒たちと一緒に悪の組織を倒したとき、ほんの少しだけ、気持ちいいと思った。
僕は、正義感とかではなくて、自分の力だけで打ち勝ったことに快感を覚えていた。
それだけではない。
ジムリーダーを倒すとき、四天王に挑むとき、格上のトレーナーに打ち勝ったとき…。
嬉しいのはもちろんだったが、どこか気持ちがよかった。
勝った。
なんというか、やはり快感だったのだと思う。
けれど一度だけ、違ったときがある。その時だけは妙に気持ちが悪く、恐怖心を抱いたことをはっきりと覚えている。
それは、彼―グリーンに打ち勝ったときだった。
涙をこぼして、何故だと呟く彼の背中を、以前のようにさすって、なだめることが出来なくなっていた。
それは彼のプライドを考えた上での行為でもあったが、なによりも、僕がこの手で彼を傷つけるような気がしてならなかったのだ。
『グリーン…僕は…。』
『いい、大丈夫だ。お前が強かった。それだけだ。』
僕はあの時何と言おうとしていたのだろう。
僕は君を傷つけるつもりは無かった、と言いたかったのか、なんなのか。
彼を傷つけたどうかも不確かなのに、僕は勝手に彼と距離を置くようになった。
壊れたガラス細工は同じ形には戻らない。
粉々にしてリサイクル。もしくは不格好だけど、接着剤とかで継ぎ接ぎにする。
僕の手で、君をそんな風にしたくなかった。
君を大切にしたかった。
皮肉にも、友情とは別の、君に対する感情を覚えたのはその後で、僕はきっとこれからも、君が怖くて触れられない。
漠然とだけど、そう思う。
僕は君が、愛おしすぎて怖くなる。
僕は君を、壊してしまいそうで怖くなる。
きっと、僕が君に思いをつげるとき、君は涙で顔を歪めるんだろう。
僕は君が好きで、君が怖い。
end
赤→→→→→緑とみせかけて
実は赤→←緑だといいなと思います。