ゼクロムの背にのってNを探すうちに、僕はどうやら異国の地までやってきたらしい。目に入る風景もポケモンも、イッシュには無いものばかりだった。ゼクロムもそろそろ羽を休めたいだろうと思い、適当な山をみつけ、そこに着陸した。
「…一面雪。寒いな。」
誰かが居るはずもないだろうと呟いた言葉は、白い吐息となって名も知らない大地にとけ込むはずだった。
「だってここは、シロガネ山だからね。」
思いがけず帰ってきた言葉に、思わず身構える。声の方を向けば、白い雪に相反してゆれる漆黒の髪が視界に入った。
「…ねぇ、君は強いの?」
帽子からちらりと覗き見る真紅の瞳に、僕はとらえられた。何をしたわけでもないのに、もうだめだと本心が告げた。逃げられない。立ち向かうしかない。
彼は僕と対して変わらないだろう背丈と声色と、強きを求める確固たる意志をもっているようだった。しかしどこか儚げで、今にもこの雪山のどこかで雪崩となって崩れていきそうな雰囲気が漂っていた。
出会って数分、お互いの名前すら知らない。しかし僕の体全身が、目の前の赤を黒で塗りつぶしてしまえと告げていた。
「弱くはないと思うな。」
にっこりと微笑みながらつげ、右手をモンスターボールへとそえた。
「…そう。じゃあ精々、僕を退屈させないように頑張ってね。」
相手は表情を微動だにさせずに僕に言い放ち、図鑑でしかみたことのないようなポケモンを繰り出した。
僕の心はいっていた。
こいつは僕と同じだと。
やらなければ、やられるのは自分。
同じモノは二つもいらないのだ。
僕は僕のために、目の前の僕のような誰かを倒すだけ。
(気づいたときにはもう遅い。)
(僕が倒したのは、誰かじゃなくて本当の僕だった。)
END
――――
ぎゃあきゃあ!
久しぶりに更新したとおもえば赤黒とか!
赤黒同族嫌悪むしゃあ!
トウヤくん…ブラックくんはレッドさんに、イッシュで一番のトレーナーになって、強さを求め続ける自分をかさねてるんです。
人間って自分と似てる人を察知しやすいですよね。
察知して嫌いになるか大好きになるかは別として…。
レッドさんを倒したときに、やっぱり自分は強いって認識すると同時に、もし自分がレッドさんの立場だったらって考えて、動揺しちゃう。自分だって負けたら終わりのこんな不安定な居場所にたってるんだって。
つまりは赤黒うめえってことです。