※志摩が悪魔落ちになりそうな雰囲気
※暗いです
君と同じになれたら
奥村くんがサタンの落胤だと、いつもの授業の説明をするように奥村先生はおっしゃりはった。
驚いたし、何でやろうって思った。苛立ちとか憤りではなくって、ただただ、何で奥村くんなんやろうって、それしか思わなかった。
何で俺が普通の子で、奥村くんはサタンの子で、俺は奥村くんを好きになってしまったんだろう。そればかりが頭の中を延々と回り続けていた。
「…て…せっ説得力ねーか!ワハハ!!」
そう言って笑う彼の笑顔は痛々しくて、抱き締めたくなるけれど、俺には坊の友達っちゅう立場もあるわけで、どうすることも出来なかった。
最低だとわかっていても、当たり障りの無いように生きる癖がついてしまっていたのだ。
奥村先生から事実を告げられたその夜、俺は奥村くんに電話をかけようと携帯電話を開いていた。
彼の携帯番号をディスプレイに表示するが、通話ボタンを押すことが出来ない。
『奥村くんがなんだって、俺は奥村くんがすきなんですわ。』
こんな簡単な言葉が言えなくて、情けなくなって、ああ俺も悪魔になってしまえば楽なんかなぁ、と考えた。
(背後に近寄る闇に気付かず。)
雨音だけが耳にこびりついていた。