触れるか触れないかの微妙な距離で、ほんのりと感じる彼のぬくもりに少しだけまどろんだ。しかし、彼の幼い寝顔を独り占めできる時間を堪能しなくては、もったいなさすぎると思い、小さく欠伸をもらした。


呼んでちょうだい!


話をしているときも、抱いているときも、いつだって奥村くんは可愛いけれど、俺が好きな奥村くんトップ5にこの寝顔はランクインしている。
サタンの落胤という事実を微塵も感じさせないあどけない寝顔は、さながら天使のようだと思ってしまうほどだ。
たまにうなされてアホ面になるところも、可愛らしくて仕方がない。


まじまじと奥村くんをみていると、彼が身をよじり、くぐもった声をだした。

「ん……ゆ………ぉ…。」
「何か言いました?」
「…ゆき、お…。」
「……っ。」

俺の隣で気持ちよさそうに睡眠を続ける彼からは、あろうことか彼氏以外の名前がとびだした。
一気に腹の底から、どす黒い気持ちが沸々と沸き起こる。
数秒後、俺は奥村くんの柔らかく張りのある頬を、ぺちぺちと叩き始めた。

「起きて下さい!なんなんですか!俺の名前やのうて、奥村先生の名前よばはるなんて。ちょっと!聞いとりますの!?」
「んー…、ゆき…いた、い。」
「……ああ、もう。あったまきたで…。」

起きた時に痛くないようにと、手加減していたが、こうも奥村先生の名前しか呼ばないとなると、流石の俺も頭に来る。
だから目一杯の力で、奥村くんの尻尾を握りしめてやった。


「ふぎゃあっ!しっ…志摩ぁ?何すんだよ!」


布団からとびあがった彼は涙目で俺に訴えかけてきた。しかしそんなことは知ったことではない。

「別に。何もありませんわ。」
「痛いだろ!…せっかく寝てたのに!」
「それはそれは、すいませんでしたねー。」
「…お前、何怒ってんだ?」


自分の寝言を覚えている人なんてなかなかいない訳で、奥村くんにとっては、何で俺が怒っているのか見当がつかないのも当たり前。だからといって、俺だってこんな醜い嫉妬心、この人に知られたくないくらいの安いプライドを持ち合わせているものだから、どうも素直になれないのである。



「…なあんも、ありません!」



君の夢の中も、俺で一杯にしたいなんて。


END

志摩って嫉妬しそう
でも燐も下らないことで怒りそうだからおあいこ





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