「それで、Nはイッシュに戻るのか?」

俺の率直な質問に、Nは一瞬考えた後にすぐ首をよこに振った。

「ボクは、トウヤ…イッシュのみんなに釣り合わないから…。あそこにいちゃいけないんだ。」

眉間にシワをよせ、苦しそうにそう語るNが無性ににいらだって、俺はつい手をだしてしまった。ゴツリと鈍い音に、Nの短い悲鳴が続いた。


「釣り合う、あわないの問題じゃない。お前はトウヤの側に居たいのか、居たくないのかを聞いているんだ!」
「そんな…だって、ボクは本当に酷いことを……。」
「過去は過去。これから先に、N自身はどうしたいかを聞いてるんだよ!」
「ボク、は…。」



Nは言葉をつまらせ、顔をうつむけてしまった。しかしこうでもしないと、きっとこいつの心には響かなかっただろう。
相手と自分を比べて、釣り合うかどうかなんて考えるだけ無駄なのだ。それは俺が実証済みだからよくわかる。
あいつの―レッドの前に立っていたと思っていたら、いつの間にか追い越されて、今度は俺があいつの背中を追いかけていた。勝手に自分じゃレッドに釣り合わないと決めつけて、自分の気持ちに蓋をしようとさえしていた。けれど、そんなことは所詮全て自己欺瞞でしかなかったのだ。


俺はただあいつの隣で、また一緒にくだらない話をして笑いたかっただけだったのに。




俺は、Nが固く握りしめた拳に、次々と雫が落ちていくのをぼんやりと眺めてた。すると、彼が口を開いた。





「ボクは…トウヤと、友達と一緒に、笑いあいたいんだ!」



はっきりと言い切ったNの目に、もう迷いはないように見えた。


(ああ、そうか…。)


こいつはかつての俺なのかもしれない。
俺はNの髪がぐしゃぐしゃになるぐらい、彼の頭をなで続けた。

「それじゃあ、次にすることはもう決まったな。」

Nにむかって笑いかけると、彼は力強く頷いた。



それから数週間、Nは俺の家に泊まり、時にはレッドや俺とバトルをし、心身ともに回復していった。
別れの日は、絵に描いたような快晴だった。別れを惜しむ素振りはみせたが、俺たちは多くの言葉を交わさなかった。
レシラムの背に乗って旅立っていったNが、『ありがとう。』と言って微笑んだ姿を、きっと俺は忘れないだろう。




「なあ、レッド。」
「………?」
「今度いなくなるときは、俺も一緒じゃないと許さねえから。」
「…考えとく。」


帽子のつばに手をかけて顔を隠した彼からは、表情がよみとれない。だから俺は自分の気持ちだけでも伝わるようにと、彼の開いている方の手を強く強く握りしめながら、Nが見えなくなるまで空を見上げていた。



それは燦然と



僕らの未来は輝いていると信じて。



END

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短くまとめるはずが長くなりました。
赤と緑によって、人間らしくなっていくNを書きたかったんですが、どんどん脱線していきました!
レッドさんについてはとくに不完全燃焼ですね(^o^≡^o^)


…ほんとはココアのシーンを書きたかっただけです(`・ω・´)!


読んでくださったみなさま、ありがとうございました。





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