※従兄弟パロ
臨也がシズにいって呼んでいます。
24時間戦争コンビの面影皆無です














傷つけ愛



シズにいはいつも怪我をして帰ってくる。
本当に呆れるし馬鹿じゃないかって思うけど、彼は自分から喧嘩を売らないし、売ったとしてもちゃんとした理由があることがほとんどだから、俺が口出しを出来る余地はないことが多い。


「今日はどうしたの?」
「……。」


喧嘩をした後はだいたいだんまりを決め込む。そんなシズにいに対して、一方的な言葉のキャッチボール(しかし球は十球中一球かえってくるかこないか)をする。これも日常化されてきたようだ。


「せめて前の傷が塞がってからにしたらどうなの?」



俺は慣れた手つきで、消毒液を傷口にたらし脱脂綿で軽くそこをふく。しみるのか、時折シズにいが息をつまらせているのが分かった。しかし、痛くなるのがわかっていて喧嘩をするのだから自業自得だと思い、俺は手当てをする手をゆるめない。


それにしても、シズにいと同居をしはじめてから幾度と無く怪我の手当てはしてきたつもりだったが、こんなにひどい怪我をしてきたのは久しぶりのような気がする。普段は、かすり傷が一つ二つあるかないかなものであるが、今回は打撲あり切り傷あり。

絶対におかしい。
今回はもしかしたら……。



「ねぇ、シズにい…。もしかしてさ、自分から喧嘩ふっかけた?」


シズにいのきれいな瞳が一瞬揺らいだのを、俺は見逃さなかった。
(やっぱり。)
シズにいが自分から喧嘩を始めるときは相当頭にキているため、相手も自分も省みず、見境無く拳をふるうのだ。本人は自覚がないようだが、自分の力を制御できないことは、相手はもちろん自分の体だって少なからず痛めることを意味する。


「何があったの?」
「……。」
「怒るつもりじゃないの。心配してるんだよ?…こんなに怪我しちゃってさあ…信じらんない。馬鹿みたい…いや、馬鹿でしょ!」


少しは大人しくして、心配する人の気持ちも考えてほしいものだ。

「……悪ぃ。けどよぉ…。」


謝罪の言葉の後に、言い訳をはじめるための接頭語。それを合図にするように、俺は救急箱の蓋を閉じ、シズにいの言葉を聞き漏らさないために耳に意識を集中させる。


「…お前の、悪口を……クラスの奴らが…。俺、それを…聞いて。それで………。」

シズにいのたどたどしい言葉を聞いて、思わずこれでもかというくらい最大級のため息をついてしまった。


「シズにい…ほんと馬鹿。」
「なっ…!?」
「俺は嫌われるような性格してんの!悪口なんて言われなれてんだよ!気にしてたらきりないよ?」
「だってよぉ!」
「口を閉じなさいこの喧嘩馬鹿!!」


俺が学校でしていることや、クラスメートや教職員に言っていることを考えれば、悪口などいわれずに褒められるというほうが可笑しいのである。そんなことでいちいちシズにいが怪我をしていては、たまったもんじゃあない。


「俺はそういうの馴れてるから平気だって。気にしなくていいからさー。だいたいなんでシズにいが俺のことで喧嘩して、俺がその手当てをしてるわけ?本末転倒だよ。」
「…俺が、嫌だ。」
「は?」
「気にしないって言ってるけど、お前いっつも泣きそうじゃねえか。」


その一言で動悸が早くなるのを嫌と言うほど感じる。どうしていつもシズにいは、俺の本当にバレたくなくて隠している所を見透かしてしまうのだろうか。

「だからって、シズにいが怪我することないじゃんか…。」

知らぬまに両目からぼろぼろと大粒の涙がこぼれ落ちていた。
俺は慌てて顔をこすったが、シズにいがその手を強く握りしめ、俺の肩を痛いくらいに抱きよせた。

「体の痛みは消えるけどなぁ…ここの痛みは消えないもんなんだよ。」
「…っ、うっ……っく。」
「もっと俺を頼れ、臨也。」


泣きじゃくる俺をなだめるシズにいからは、湿布と消毒液の匂いがしてきて俺の鼻をツンとさせた。
シズにいが優しく触れた左胸だけがじんわりと暖かい。

どんなに悪口をいわれようと、大勢にさけられようと、シズにいがいれば俺はそれで充分なんだと言ったところで、きっと彼は理解しようとしないだろう。
それと同じように、俺にだって彼の言い分が分からないのだ。





ぐちゃぐちゃした頭の中で、救急箱に何を買って補充しておかなければと自然に考えてしまうほどに、シズにいは俺の生活の一部になってしまったようだった。





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