「オオカミ少年ってわかる?」

嘘吐き少年

折原臨也は唐突につぶやいた。
ちゃんと原作をよんだことはないにしろ、なんとなく話は分かるつもりだと思い、竜ヶ峰帝人は答えた。

「臨也さんみたいな人の話ですよね。」

微笑むその顔は、無垢というより無邪気。意図的な悪意すら感じる。
赤目の男より遥かに年下であろう男子が放つ言葉に、折原は苦笑いをした。

「まったく…ひどいなあ。俺は嘘なんてつかないよ?」
「ついたら信用無くしますよね、情報屋として。」
「だから言っているじゃない。」

臨也は口を尖らせてむくれているが、可愛さの欠片もない。むしろ苛立ちを感じさせるような、わざとらしい反応だ。

「でも…臨也さんの所には、本当に重大なことが起こったとき、誰も駆けつけてくれませんよ。きっと。」

饒舌な彼がいつも通り反論してくるだろうと身構えた帝人だったが、そんな事はなかった。ただ無言で帝人の背中に頭をくつけ、もたれかかっただけだった。
重いなあと思いつつも嫌がる素振りを見せないのは、帝人が彼のことをよくわかっている為だろう。

(今日は、泣かないんだな。)

ひどいときは、背中がしっとりと濡れる。暖かくも悲しい重みを帝人は知っていた。



「ねぇ……帝人君も、俺のとこには来てくれないの?」


くぐもった声が振動として背骨を伝って、脳内に届いた。帝人は時計をちらりと横目でみた。
時計の針はとうにてっぺんを回っており、日中はあんなにも五月蝿い都会の喧騒が、嘘のようだった。『街も眠るのだ。』と、誰かが言っていたような気がする。



「絶対嫌です。貴方なんか大嫌いですから。」



すぱっと言い放った言葉は、深夜の冷たい空気を切り裂いていった。臨也は無言のまま帝人の腰に腕を回した。離さないと言わんばかりに、きつく、きつく抱きしめる。


「ねぇ、臨也さん。今日何日か知ってる?」


臨也はハッとして顔を上げる。彼がオオカミ少年の話を切り出したその時は、もう過去の話。昨日のことになってしまっていたようだ。


「帝人君なんて、本当に、大嫌いなんだから。」
「えぇ、僕もです。」
「帝人君なんてね、いなくなっても…平気だよ。」
「そうですねぇ。」


彼の口から呟かれる、愛のある嘘を受け止めながら、帝人は彼の嘘ごと愛を貪るように彼の口を塞いだ。


END

シリアスになった…!
四月馬鹿四月馬鹿(`・ω・´)





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