あいとかんしゃと。



12時を回って、僕は一つ歳をとった。
変わったものはとくにない。
変わらなかったものだらけ。

あえて提示するなら、可愛い彼氏ができたことかな。なんて、自分で考えてみてから、苦笑いをした。


「そういえば、あの人僕の誕生日知ってるのかな?」


情報屋をしているから、いとも簡単に僕の情報は手に入るとは思うけれど、それらしい言葉は一度も聞いたことがない。
(普通…なら、誕生日は彼女がお祝いしてくれるよね。)
彼が僕にケーキをつくって、クラッカーを鳴らして、プレゼントを渡す。考えただけで笑いがこみ上げてきた。彼にとっても、僕にとっても、所謂一般的な誕生日のお祝いはどうもしっくりこないみたいだ。

そもそも、祝われるかどうかが問題なわけだけれど、彼の事を考えていたら無性に声が聞きたくなり、携帯電話を手にとった。


こちらからかけようとした瞬間に、着信音がなりはじめ、びくりとしてしまう。しかし、画面に表示された文字をみて、心臓が通常の心拍数に戻る前にすぐさま通話ボタンを押した。


「はい。竜ヶ峰です。」
『…もしもし、帝人くん?』
「どうかしましたか?」
『あの、さ…えっと……。』


彼が言いたいことは分かるような気がするが、恥ずかしがる臨也さんの声が可愛くて、ついつい遊んでしまう。


『帝人君………う、生まれてきてくれてありがとう…。』



消え入りそうな声で呟かれた言葉は、僕が待ち望んでいた言葉の何万倍も威力があった。これは予想外だ。

「臨也さん、僕の誕生日を知っていてくれてありがとうございます。」
『…うん。』
「臨也さん…。僕を選んでくれてありがとう。」
『………君以外に、誰も選べないよ。』


僕が生まれたことに感謝。
日常と非日常をくれるこの地に感謝。
友達に感謝。
今生きていることに感謝。
明日を生きていけることに感謝。


そして、僕の隣を選んでくれた彼に、溢れんばかりの愛と感謝を。



END

帝人様お誕生日おめでとうございます!

『何か欲しいものある?』
「臨也さんの(自主規制)が欲しいです。」
『死ね!』

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