※9巻に登場する奈倉さん(本人)と臨也の話。軽い小説9巻ネタバレと、とてつもなく捏造していますので、よろしかったらスクロールでお楽しみ下さい。












奈倉は俺の道具だ。俺が決めた。
新羅を傷つけた仕返しをするために、俺が一生をかけて奈倉を使うと決めた。



だから、あいつは俺の道具なんだ。



利用理由



「もしもし、奈倉君?」


俺は慣れた手付きで仕事用の携帯電話の電話帳を開き、電話をかけた。
数回のコールの後に、受話器の向こうで聞こえた声はやはり怯えているようだったが、そんなことはどうでもいい。


「今すぐ、来てくれるかな?」


NOなんて答えは聞く気もなかったし、相手はすぐ了承の返事をしたため、電話を切った。
相手の都合なんて知らない。
だって、彼は俺の手駒でしかないんだから。




「お邪魔します…。」


控えめな声とともに、開けたドアの隙間から見慣れた顔がちらりと見える。
いい加減おどおどした態度をやめてほしいのだけれど、俺が彼にした…いや、している仕打ちを考えれば仕方のないことなのかもしれない。



「いいよー入って。」

「…失礼します。あの、用ってな…。」

「座ればー?」


何ですか?と言いかけた言葉を遮断する。
戸惑いながらも、客人用のソファーに腰掛ける奈倉を横目にキッチンへと移動する。


「コーヒーだよね、砂糖たっぷりの。」

「俺、ブラックしか飲まないんですけど…。」

「あっれー、ゴメンゴメン。忘れてたよ。」


本当は覚えていたが、これはほんの冗談のつもり。俺は毎回奈倉君と、このやり取りをするのが嫌いではない。
ブラックのコーヒー。くつろがない君。ほのかに匂う煙草の残り香。
嫌いじゃない。



「はい、どーぞー。」

「…どうも。あの、用事って。」

「最近さー、天気悪いよね。」

「あ…はい。」

「雨も降りそうだね。俺は雨好きなんだけどさー。コートが汚れちゃうのは嫌だよね。」

「はぁ…。あの、俺仕事があるん…で、早めに…。」

「あー…でもやっぱり嫌かも。憂鬱になるもんね。」

「臨也さん。」

ふと、奈倉の口調が変わった。
普段はへらへらと当たり障りのない話しぶりのくせに、ちゃんと意志を伝えるときに変わる雰囲気と声には、やはりまだなれない。


「何?」

「はぐらかさないでください。」

「…ちょっと会話を楽しもうと思っただけじゃない。」

「だから、早く用件をお願いしますよ。」


奈倉は俺と話すとき、本当に嫌そうな顔をする。
恨まれてもしょうがないかなとは思っているから、別段気にしない。
これから言う用件によって、彼の顔がかつてないほど歪むだろうことも、全く気にしない。むしろ楽しみだ。




「ね、奈倉君。」

「はい。」

「抱いて。」

「は…?」


うん。その顔は好きだ。

(拒否権なんて君にはないよ。たぶん分かっているだろうけど。)

今まで向かい合わせに座っていたが、奈倉の腰掛けるソファーへと静かに移動する。
女がするみたいにそっと奈倉に寄り添って、静かに答えを待つ。


「臨也さん、でも…流石にそれ、は。」

「黙って抱きなよ。」


君は俺の駒なんだから。と、呟きかけた言葉を飲み下した。




俺は君という手駒を操るプレイヤー。
道具には意志も拒否権も必要ない。



だから、お願い。

大人しく言うことを聞いていて。




(道具に抱いたこの感情が、ばれてしまうまで。)





END
奈臨はひたすらドロドロかドライ希望





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