好きだから、ずっと見ているから、俺は先輩のことをよく知っていると思っている。




俺以外に向ける笑顔に
苛立って





先輩はよく笑う。
ツボが浅いとか、そうゆうことじゃなくて、微笑むと言えば分かるだろうか。
よく笑うし、よく怒るし、よく泣くのだ。

感情の起伏がはげしいのではなく、豊かなのだ。

俺と話すときは優しい笑顔、誰かにいたずらされたら困ったような笑顔、ポケモンと特訓しているときはわくわくしているような笑顔。

悔しいときは眉間に皺をよせるし、悲しいときは綺麗に泣く。



俺は、先輩が好きだから、先輩の色々な顔を知っているつもりだから、全てが俺に向けられる事はないということも分かっている。

それでも俺はまだ、がきんちょで、どうしようも出来ないことがあることは分かっていても、自分の中に沸々と湧き上がる感情をセーブできないのだ。



俺が一番好きな先輩の笑顔は、俺に向けられることは一生無い。

いつも、その笑顔の先には頂点のあの人。俺が何度も何度も挑んでも勝つことが出来ないあの人がいる。
燃えているような、冷めているような、暖かいような、厳しいような、なんとも言い表し難い赤い瞳を覗くとき、グリーン先輩の笑顔は誰よりも柔らかく、輝いている。

俺が欲しいのはその笑顔なのだけれど、それを手に入れることが出来ないことを分かっている。
好きだから、愛しているからこそ分かるのだ。


それでも俺は。



「俺は…先輩の笑顔を、独り占めしたいんです。」




俺以外に向ける笑顔に苛立って、俺はあなたの唇にかぶりつく。


end





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