俺が知っていること。


彼の名前。
彼の電話番号およびメールアドレス。
彼の居住地とその住所。
彼の組織上の立場。

そして、彼の想い人。



以上が、彼について知っていること。


君にお似合いの



彼は、俺の後輩にあたる。
最初会ったときは、本当にこんな餓鬼がダラーズの創始者なんて思っていなかった。とぼけてエアコンみたいな名前だね、とかボケてみたけどツッコミも至って普通。中の中。
初めて会って声を聞くまでは、どこにでもいる日常の一部で、普通の毎日を構成するたった一つのコマぐらいという認識しかなかった。


でもなんでかわからないが初めて会ったとき、俺の頭のてっぺんからつま先まで電撃が走った。
俗に言う、一目惚れってやつなのかもしれなかった。
俺は、波江や波江の弟君ほど狂ってはないから、運命の相手だなんては思わなかったけれど確かに好きだとは感じた。



俺はあの手この手で、彼にまつわる情報を集め始めた。
平凡な一高校生の情報なんて、簡単に割り出せるものだ。なんせ俺は情報屋だからね。

そうして、情報をあつめているうちに、ある名前にたどり着いた。

『紀田正臣』

彼の名前は俺だってよく知っていた。ちょっとばかし前に問題…俺にとっては暇つぶしの出来事を起こした黄巾賊の元トップ。そして、帝人君のお友達。
俺だって悪逆非道な訳じゃないから、愛する帝人君の親友とあらば、仲良くしてもいいと思っていたんだ。

でも、それは無しになった。

たどり着いたその名前は、帝人君の想い人だったのだ。
相手が、園原とかいう眼鏡の子だったら諦めもついた。なんでも知ってる俺だって、性別はこえられないからね。
しかし、相手は男。しかも、俺にいいように弄ばれるような、哀れな男だ。


俺はこんなに、彼のことを知って、理解して、愛しているというのに、矢印の向きは一方通行で、スルーもいいところだ。

そんなやつは、君には似合わない。



俺なら君のためになんだってするし、紀田君より絶対的に君とお似合いになれると思っていたのに。
本当に残念だ。




「みーかーどくーん!」

「臨也さん!…何ですか?」

俺が甘ったるい声で帝人君に話しかけると、彼は恐怖と希望を混じらせた顔でこちらを振り向いた。


俺が、背中に隠しているナイフを愛しい人に向けるまであと3秒。

帝人君の顔から希望が消え、恐怖と絶望で一杯になるまであと5秒。

彼が俺の物になるまで、あと―――。



END
やんでれ臨也はがち怖いと思います。






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