黒子♀
いつからだっただろう。
彼が笑わなくなったのは。
いつからだっただろう。
全てが見えなくなったのは。
「…青峰君」
「あ?何だよユナ」
「練習、始まってますよ。行かないんですか?」
「…これ以上強くなってどうするんだよ」
そう吐き捨てる彼に、私は息を詰めた。
ああ、また、そんな顔。
あの眩しいくらいの笑顔じゃなくて、意味を失ったような無表情。
嫌だ。そんな顔。
しないで。
「練習して、また強くなったら、もう誰も相手してくれねぇだろ」
「ッ、そんなこと、」
「じゃあこの間の練習試合は?アイツ等、第2Qですでに戦意消失してたじゃねぇか」
思い出すのは、先週の土曜日の試合。
情報ではそれなりに強いチームの筈なのに、彼の前では只の平凡選手だった。
圧倒的な力の前に諦めるのだ。
敵は何処にも、いない。
それは、とてもつまらない。
「けど、青峰君は、バスケ、好きですよね?」
「まーな。でも、つまんねぇ。やる気も起きねぇ」
「それは、もったいないですよ」
私はもっとやりたいんです。
貴方と一緒に。
影として有り続けたい。
だから、どうか。お願いです。
「青峰君。私とバスケ、やりに行きましょう?」
いつかは壊れてしまうかもしれないけれど。
今は、まだ。
「一緒に、行きましょう」
この世界に居させて下さい。
崩れるのが怖いから(虚無な光を助けたい)――――――――――
お題は『Discolo』様より。
初めての成り代わりです。
時期は中2の秋ぐらい。
才能が開花しちゃって笑わなくなった青峰をどうにか元に戻したい夢主。
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