ネタ帳 | ナノ

  6



今日は木登りをすることになった。
普通の女の子はそんなことしたがらないのに、珍しいと思う。

けどやっぱりちょっと怖いみたいで、時々背中を叩いて励ましながら登った。



『Ich bin…!(すごーい!)』



相変わらずなんて言ったのかは分からないけど、感動してるのは確かだ。
目が輝いてる。



「そこのチビふたりーっ!ビビッてちびんねーうちに下りた方がいいぞーっ」

「ぎゃははははは」



くだらないことを言ってバカにしてくる年上に、「フッ」と見下してやる。


すると急に、木がぐらぐらと揺れ出した。
驚いてしゃがむと、目が合ったのは少女。

けらけらと笑っているから、彼女が原因だ。


ちょっとムカついて、隙を見せた少女に、仕返しで木を揺らした。
さっきよりも大きく、ゆっさゆっさと。

そうしたら、少女が。


少女の足が、木から落ちた。



『……っ』

「だ、大丈夫だった?あの…っ!」



後を追いかけるように木を下りて、少女に駆け寄る。

落ちてうつ伏せになったままの少女を見て、血の気が引いた。


だって、腰のところに、一本の切り傷ができていて。

そこから、血を流していたから。



(きゅ、救急箱、家から、とってこなくちゃ…っ。
お、大人の人も、呼んで…っ)



家に戻ろうとしたら、後ろから引っ張られた。

少女は立ち上がり、ボクに向かって高らかにピースをしていて。
それでパニックになっていた思考が元に戻った気がした。


その時、ちょうど時計が5時になり、それを知らせる音楽が鳴り始める。



「あ…っ」



帰ろうとして手を振る少女の腕を掴んだ。



「……。ごめん」



伝えた途端、目を点にして“?”を浮かべる少女。
やっぱり、そうだよね…。



(とかって、日本語で…言って、どーすんの)

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