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「悠太、今日一緒に遊べないの?」
小学2年生の夏休み。双子の兄はベッドの上で咳をしていた。
「祐希ちゃん。悠太ちゃんお熱があるの。ゆっくり寝かせてあげましょうね」
「…うん」
たくさん遊べると思ったのに。
けど辛そうな悠太を見て、そんな言葉は呑み込んだ。
「……」
「…祐希、ね。
おかしボクの分も食べていいから…」
「うん」「…早いよ返答が」
しょうがないから、兄を寝かせる為に外に行こう。
さっき許しを貰ったおかしを持って、外に飛び出した。
*****
(あーあ。ヒマ…。せっかくの夏休みなのに…)
ポリポリと貰ったお菓子を食べながらボーッとしていたら、いきなりシーソーが傾いた。
見ると、麦わら帽子を被ったような金髪の女の子がこっちを見て笑っている。
(うわ、きれー)
「Ich werde es zusammen machen!(一緒にやろうよ!)」
「…!?」
何、今の。
地球語…なのか?
固まっていると、女の子はシーソーを手で叩いてた。
一緒にやれ…と?
ギーッコン、ギーッコン、ギーッコン…。公園にシーソーの音が響く。
「あの…名前くらい聞いてもいいですか。一応知らない人についてくなと言われてるんで」
「?」
通じないし。
でもボクも遊び相手がいなくてヒマだったし…。
そう思うと、少女の手を引っ張っていた。
*****
――ガシャコン(ちっ。またこれか…)
ガチャポンをして出てきたのはいつも取ってるザコキャラ。
欲しいのは出てきてくれない。
「?」
「やってみる?」
キラキラとした目を向ける少女に100円玉を渡す。
やり方を教えて出てきたのは、欲しかったヒーローヤマトの完全体バージョンだった。
「wenn!Es kam heraus!? (すごいっ!出てきた!?)」
擬音語を付けるとしたら、“ペカーッ”とかだろう。
それくらい少女は感動していた。
ボクがいきなり欲しかったヤツを出されたことにショックを受けていると、「こっちがいいの?」と少女が甘い手を差し伸べてきた。
(いやいや、自分の力で手に入れてこそ…!!)
少女の手を拒否し、涙をこらえる。
…あれ?っていうかなんで見知らぬ少女と一緒に…?
少女はキラキラとした表情でガチャポンのカプセルを見ていた。
(まぁ、しゃべんなくても遊べるのは楽)
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