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アスカside.
「あ、気がつきました?よかった〜」
居間の方から、お妙さんの声が聞こえた。
ここは万事屋、銀さんの家。似蔵との戦いで致命傷を負った銀さんを、新八と協力してなんとかここに運び入れたのが、昨日のこと。
「全然動かないから、このまま死んじゃうのかしらって思ったのよ。アスカちゃんも凄く心配してて…。
大丈夫ですか?意識しっかりしてます?私のこと分かります?」
「まな板みたいな胸した女でしょ?」
数秒で、銀さんの顔はお妙さんによってフルボッコにされていた。
「そんだけ軽口叩ければ問題無ぇな」
「アスカちゃん、お粥作れた?」
「おう。食材買ってきて貰っちゃってごめんね妙さん」
「気にしないで」
「お前等いつの間に仲良くなってんだよ…」
「銀さんが気絶してる間にな〜」
キッチンで簡単に作ったお粥を差し出す。
卵と鶏肉とキャベツを入れたお粥は丁度出来上がったばかりで、ホカホカと湯気を出している。
銀さんに「アスカって料理出来たのか……?」とか言われた。確かにいつもやらないけど。私だって食べられるくらいの物は作れる。
和樹と2人暮らしだから基本的に和樹任せだけど、一緒に作る時もあれば、雄二や明久や康太や秀吉の家に遊びに行った際に共同作業で作る時もある。
得意なのはスウィーツだけど。
「…美味い」
「ホントか?よかった」
「それで…お前何でここにいんの?」
「新ちゃんに頼まれたんです。看病してあげてって」
「何で看病する人が薙刀持ってんの?」
「新ちゃんに頼まれたんです。絶対安静にさせて、出かけようとしたら止めてくれって」
「止めるって何?息の根?」
「鼻じゃね?」
「それは塞ぐっつーんだよ。つか息すんなってことか?酷くね?」
いや、流石にお妙さんの薙刀は引いたけどな…。
お粥作りながら、いつそれを喉元に突き立てるんだろうとヒヤヒヤしてたし。
「そういや、新八や神楽…和樹はどうした?」
「あの……用事でちょっと出てます」
ギクリ、という声が私の内心で響いた。
新八はまだいい。今は例の鍛冶屋のところに話を聴きに行っているだけだ。
でも、神楽と和樹は……まだ、帰ってきていない。
大方予想は付いてる。つか、原作通りなら高杉一派に捕まってる筈だ。
そうなる前に逃げろよって言っといたんだけどなぁ…。私の言うこと無視したな、和樹め。帰ってきたら説教だ。
「用事って何よ」
「いいからいいから。ケガ人は寝てて下さい」
銀さんは、どうやら疑問に思ってしまったらしい。
違和感は拭えない。が、先延ばしにすることは可能だ。
私は布団の脇に置いてあったジャンプを銀さんに押し付けた。
「ほら、ジャンプでも読んでゆっくり傷治せって」
「オイ、お前等なんか隠して……」
銀さんが私等に問い詰めようとして上半身を起こしたその時。
ドスッという音と共に、お妙さんの薙刀が銀さんの布団に突き刺さった。
突き刺した張本人は冷酷な、冷たい視線で銀さんを見る。
「動くなっつってんだろ。傷口開いたらどーすんだコノヤロー」
大迫力デスネ、オ妙サン
私に向けられていないと分かっていても、背中に冷や汗が伝った。
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