銀色世界を進め! | ナノ


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アスカside.



朝、万事屋にて。



「お茶です」

「…………」

「あの…今日は何の用で?」



お客さんが来たのはいいけど、それが普段ヅラと一緒にいるエリザベス……エリーだとは思わなかった。

新八がお茶を出しても、無言で私等を見つめるのみ。



「(…何なんだよ。何しに来たんだよ。この人恐えーよ。黙ったままなんだけど怒ってんの?なんか怒ってんの?なんか俺悪いことした?)」

「(怒ってるんじゃなくて笑ってるんじゃないんですか?)」

「(笑ってたら笑ってたで恐いよ。何で人ん家来て黙ってほくそ笑んでんだよ。何か企んでること山の如しじゃねーか)」

「(新八お前のお茶が気にくわなかったネ。お客様はお茶派ではなくコーヒー派だったアル。お茶くみだったらその辺見極めろヨ。
だからお前は新一じゃなくて新八アルネ〜。なんだよ八って)」

「(んなモンパッと見でわかるわけないだろ!!)」

「(俺すぐピンときたぞ。見てみろお客様、口がコーヒー豆みたいだろーが。観察力が足りてねーんだお前は)」



銀さん達がそんなことを言っているが、私は嫌な汗を流していた。

和樹も同様に。何故かって?決まってんだろ。


エリーが万事屋に来た。

新八がお茶を出した。

そしてさっきからコソコソ話をしている銀さん達とその内容。


これらから察することが出来るのは、一つしかない。



(銀魂で有名な長篇、紅桜篇…!)



なんてこったい。

私も和樹も、紅桜篇は映画だって見に行った。

エリーが来たってことは、既にヅラは斬られた後。

もうこんなに原作が進んでいたなんて。


ジリリリリン!


不意に電話が鳴り、銀さんがそれを取りに行く。

話し終えた後、銀さんは「おーう、俺ちょっくら出るわ」と言って行ってしまった。

さっきのは鍛冶屋のところからか。



「いちご牛乳でございます」



新八が銀さんのいちご牛乳をエリザベスに出す。

すると、エリーが泣き出した。



「泣いたァァ!!やったァァァ!」

「グッジョブアル新八よくやったネ!!」



まぁ、原作知識を持ってるから思いっ切り展開知っててカンニングもいいところだけど。

一応、事情を聴きますかね。



*****



やっとこさ事情を聴き出して、エリーに言われるがままついて行けば案内されたのは桟橋。



「じゃあ、ここで見つけたって言うの?それ」



エリーは口から血染めの小物入れを取り出した。

所々が黒ずみ、血の臭いが微かに残っている。



「血染めの所持品……おまけにここ数日、桂さんの姿を見てないなんて。どうしてもっと早く言わなかったんだ、エリザベス」

〔最近巷で辻切りが横行している。もしかしたら…〕



落胆した様子で看板を提示した。

ネガティブな方向に考えるエリーを、新八が強く言う。



「…エリザベス、君が一番分かってるだろ。桂さんはその辺の辻斬りなんかに負ける人じゃない」

「でも、これを見る限り何かあったことは明白……早く見つけ出さないと、大変なことになるかも」

「神楽ちゃん…」



和樹が神楽の言葉に不安を募らせているのが分かる。

幾ら原作を知ってるからって、心配になるのは仕方がない。

それに、一つ気になることもあるし。



(原作は当然の如く、私等がいない世界での話だ。
もしかしたら、私等がこの世界に関わったことで話が変わってる恐れがある)



そうなったら、私も和樹も分からない。

最悪のケースを想像すると、顔を顰めてしまうくらいだ。



〔もう手遅れかも…〕

「バカヤロォォ!!」



ドゴッ!



〔ぐはっ〕

「し、新八君!?」

「おいおい…」



新八がエリーを殴り、エリーはプラカードを提示しながら血を吐いた。



「お前が信じないで、誰が桂さんを信じるんだ!!
お前が前に悪徳奉行に捕まった時はなァ、桂さんはどんなになっても諦めなかったぞ!!」

「新八、落ち着けって」

「乱暴なことしても変わらないよ!」



エリーの胸倉を掴みながら乱暴に叫ぶ。

私と和樹が止めようとするが、それでも新八は続けた。



「今お前にできることは何だ!?桂さんのためにできることは何だ!?言ってみろ!言えェェ!」

「――ってーな」



新八が詰め寄った時、エリーが言葉を発した。

低い中年のオッサンみたいな声に、ワォ。と内心どこかの風紀委員長の口癖を漏らす。



「離せよ、ミンチにすんぞ」

「…すいまっせ〜ん!」



形勢逆転とはこのことだな。

一瞬で新八はエリーに土下座した。


神楽はと言うと、定春にヅラの所持品を嗅がせていた。



「私は定春といろいろ捜してみるアル。お前達はエリーと一緒に、辻斬りの方を調べるアル!!」

「待って神楽ちゃん、僕も行く!」

「おい和樹!?」



神楽と一緒に行くとどういう展開になるか、知らないワケがないだろ!?

そう目で訴えると、和樹は苦笑いをしながら「大丈夫」と言った。



「ヘマはしないよ。自己防衛くらいちゃんとやるから」

「……はぁ…」



真っ直ぐと言う和樹に、何も言えなくなる。

こうなったら意地でも聞かないからなぁ。私も結構頑固だと言われるけど、和樹もだと思う。

ある意味似た者同士だな。和樹が言わなきゃ、私が神楽と一緒に行こうとしたし。



「分かったよ。怪我すんなよ」

「うん。神楽ちゃん、行こう!」

「了解ネ!」



2人は元気に走り出して行った。

私は残った新八とエリーに向かい合って、話し掛ける。

なんか微妙に気まずい雰囲気が流れてるんですけど…。



「んで、どーする?」

「神楽ちゃんに言われた通り、辻斬りの件を調べた方がいいよね」

「そうだな。エリーはどうする?」

〔桂さんがいない今、犯人を捜さなければならない。辻斬りを調べよう〕

「決定だな。話に寄れば、辻斬りは夜にやられるらしい。それまでは聞き込みだな」



夜にこの桟橋に集合だ。



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