▼ 3
「あー…あっつい」
手で風を仰ぐように上下させるが、大して変わらない。
私の足元には倒れた隊士達で溢れ返ってる。全員私が叩きのめした。
「死屍累々だね。手加減した?」
「そりゃ勿論」
私が習ったのは剣術と言っても暗殺術だからな。本気を出したらあの世逝きだ。
全力で手加減をする技術も教わったけど、それでも命が無事なだけで隊士としてはやっていけなくなるだろうから。
「ってか、和樹も参加しろよー。私ばっかり疲れる」
「言ったでしょ。僕は非戦闘員なのー」
「ちぇ、よく言うよ」
五感が優れてる和樹は当然の如く動体視力も良い。
アニメとかでCGを使って描かれる動きを観察して、ある程度再現することも出来るんだ。
瞬間移動みたいなことは出来なくても、それっぽく速く動いたりとか。
護身術も私が教えたし。使えて損は無いからなぁ。
「そんで、いつまで人のこと見てんだよ沖田。ジロジロと鬱陶しい」
「気付かれないようにしてたんですけどねィ、バレやしたか」
「やるならさっさとやろうぜ。身体も温まったし。準備運動もカンペキ」
隊士達に声を掛けて、脇に移動してもらう。
目の前には竹刀を持った沖田。まだ始まってもいないのに警戒心を忘れない。
流石一番隊隊長。真選組最強の名は伊達じゃない、ってことかね。
「アスカ、あんまり容赦無い攻撃はダメだよー」
「おう」
「総悟、負けたら便所掃除だ」
「土方さんがやってくだせェ」
「お互い準備はいいか?それじゃあ――始め!!」
近藤さんのその合図で、私と沖田は持っていた竹刀を振りかぶった。
prev / next
3 / 4