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「さて…。誰からやる?」
銀さん達を見送り、道場に移動した。
久し振りに竹刀なんて握ったぞ。何気に重い。
周りには隊士達が集まっていて、心なしか私の姿に注目してるように見える。
真選組にだって女中がいるし…。女が珍しいワケじゃないと思うんだが。
「まずは一人ずつ相手にしてくれ」
「一人ずつ?この人数を?マジかよ。
多いから全員一斉にかかって来い。あ、防具付けてないから頭は狙わないでやるよ。そっちは全力で打って来ていいから」
「あーあ…分かりやすく挑発しちゃって……」
だって一人ずつとかダルくてやってらんねぇよ。
こうやって一人を全員で、全力で倒せないと警察なんて出来ないだろ?
その芋侍魂、見せてもらおうか。
「副長ぉ〜。幾らなんでも女の子相手に本気出せませんって」
「しかも年下だし」
「まだ十代でしょ?危ないッスよ〜」
ぷっちーん。
女だから弱いとか……言ったな?
その言葉、後悔すんなよ。
「お前等…油断してると殺られるぞ」
「と言われましてもねぇ…」
「とりあえずやるか。まず俺からだな」
「全員でかかって来いって、向こうは言ってるぞ」
「いや、流石に無理。かわいそうで」
「いーよ、土方。相手する」
竹刀を右手で持って後ろにし、左手を前に持っていく。
これが私の刀の構え方。
相手はちょっとニヤニヤしてるし…油断してんな。すぐ終わるか。
「では……始め!」
近藤さんの手が上がった。
相手の竹刀が勢いよく降り下ろされる。
それを軽く受け流して、大きく踏み出したら……。
ほら、スキ見っけ。懐がガラ空き。
そのスキを右手で持っていた竹刀で打つ。
腹って致命傷だよなぁ。
ついでに、相手が持ってる竹刀も叩き落とした。
「一本!」
周りが呆気に取られてるのが空気で分かる。
そこまで舐められてたか…アスカちゃんショック。
倒れた相手に手を貸しながら心の中で溜息を吐いた。
「平気か?」
「お、おう…。嬢ちゃん、強いんだな」
「まーな。えーっと……アンタは、少しへっぴり腰に成りがちだから、もっと背筋を伸ばした方がいいぞ。剣筋が当たり易くなるから」
「ほー……そうなのか?」
「おう。足運びは悪くないんだから。自信を持って打ち込むと尚良し」
アドバイスも付け加えて…。コイツ後々伸びそうだな。
とりあえず、実力は分かったっぽいし…。
「全員かかって来い。手加減なんかしたら容赦しねぇからな」
ニヤリ、と笑えば。
空気は固まる。
「私から一本取れたら、団子奢る」
「うわ、物で釣ったよ…」
そこツッコむな和樹。
一番手っ取り早いんだから。
団子という言葉に引かれたのか、各々竹刀を握る隊士達。
私を中心に囲んで、打ち込む瞬間を狙ってる。
息を合わせるのは得意なんだな…。
「先行はあげるよ。……来い」
迫り来る竹刀を視界で確認して、私は身体を宙に浮かせた。
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