銀色世界を進め! | ナノ


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大量の敵を薙ぎ倒しながら、屋上に到着する。

いやぁ、なんか妙に長かった。人数多すぎなんだよコノヤロー。

近藤さんは置いてきた。リーダーは外で指揮をするものだしな。



「来たか、幕府の犬」



いかにもラスボスらしい男が、小さな子供を抱えて佇んでいる。

ラストダンジョン?



「と、思ったけど今の台詞で中ボスくらいにランクダウンだわ。残念。もう少し捻ってほしいな。
あと、これ2回目だけど私は犬派なだけで幕府の犬じゃねぇから」

「ちょっと黙って!お願いだから!」

「空気を読めよアスカちゃん!」

「さっきから言ってるじゃん。空気って何?美味しいの?」

「「寧ろよく噛んでその身に刻めこのバカ!!」」

「……また随分と自由人を採用したな」

「俺だってここまでのバカだと思ってなかったよ」

「これはこれで面白い逸材でさァ」

「おいサド。アスカ狙うなら夜道に気をつけろヨ」



浪士達が私達のテンポについて行けなくて口を開けている。

人質がいるっていうのにマイペースだからねぇ、私等。



「っおい貴様等!此方には人質がいるということを忘れていないか!!」

「あ、ごめんなさい!」

「人質は忘れてないけど、テロリストのことは忘れてた」

「なんだと!?」

「はいはい、掘り下げなくていいから!」

「あ〜、そこの一般人のお陰でメチャクチャだが……。
真選組だ。さっさと人質を解放してお縄につけ」



煙草を吹かしながら土方が言う。

そうしてるとカッコいいんだがな。マヨラーなのがかなり残念だ。



「ふん!そう簡単にお縄につく気なら、最初からこのようなことはせぬ!」

「このようなことって……テロじゃないですか」

「そんな下等なことではない。これは聖戦だ!」

「腐ったこの国を変える!そして本来あるべき姿へと正すのだ!!」



何が聖戦だよ。

凄いイライラする。人質取ってる時点でゲスだ。

文月学園にも居たな、ゲスで姑息な手を使うヤツが。

それを思い出したら更にイライラしてきた。



「…アスカ?」

「…………」

(ヤバい、アスカが凄い怒ってる…)

「(……沖田)」

「(なんですかィ?)」



敵に聞こえないような、小さな声で会話する。

その様子に気付いたのか、沖田も声を潜めてくれた。



「(お前、隙を全力で突く自信は?)」

「(そりゃ、愚問だな。あるに決まってらァ)」

「(……いい答えだ)」



ニヤリと笑って、沖田に作戦を伝える。

少し目を見開いたが、「(了解)」と返事が来たから問題無いだろう。

銀さんと土方がこっちの気配に気付いたけど、スルーしてくれた。

流石大人組。私と違って空気が読める。

……自分で言って悲しくなってきた。



「分かったら早く我等の要求を呑め。そうすればこの子供は助けてやる」

「要求って何ですか?」

「この間真選組で捕まえた攘夷浪士の解放でさァ。あと、武器商人達も釈放しろとか」

「結局自分の利益だけじゃねぇか」

「黙れ小娘。生意気な口を利くと、この子供が痛い目を見るぞ」

「っ…!やだ、助けて……ママァ!!」



男の子は刀を突き付けられ、泣き出してしまった。ごめんな、すぐ助けるから。


私は爪先に力を入れて、浪士の懐に飛び込んだ。

刀を振り上げて、峰打ちを狙う。


ガキィイイイン!!



「…奇襲が見え見えだ、小娘」

「そりゃ残念。ま、目的は達したからさ」

「なんだと……」



だってすでに、沖田がお前の背後を取ってるもん。



「残念なのはテメェの頭でさァ」

「なッ……ぐはッ!」

「よっしゃ、成功!土方!」

「呼び捨てすんな!テメェ等、攘夷浪士を捕まえろ!!」



和樹が、縄で捕らえられた男の子を連れて来た。

怪我はしてないみたいだから、よかった。



「よかったけど、危なかったよ。アスカの後ろに武器持った人が迫って来てたし」

「そうヨ!しかもあのサド野郎に背中を預けるなんて狂気の沙汰ネ!」

「それは神楽ちゃんが沖田君を嫌いなだけなんじゃ…」

「でもカッコよかった!」

「いやぁ、それほどでも〜」

「おい、そこの一般人」

「あ゛?」

「態度が悪い!」

「あだッ!だって煙草とマヨネーズ臭いんだもん」



そう言ったら、沖田と銀さんが噴いたのが分かった。

だってメッチャ臭うぞ?よく太らないよな。



「ドSコンビ、笑ってんじゃねぇ!!
……協力は感謝する。が、廃刀令の時代に真剣を振り回されるとテメェも逮捕しなきゃいけねぇんだよ」

「マジかよ。警察は恩を仇で返すのが好きなのか?」

「違ェ。しかし……別に記録してる訳じゃねぇ。テレビも来てねぇし、このまま屯所で話を聞かせてくれんなら、見逃してもいいぜ」

「うわー悪い大人だぁ!怖いよおかあさ〜ん!」

「僕はアスカのお母さんになった覚えは無いよ!」



なんだよ性格はお母さんみたいなのに。

しかし、どうすっかな。話って…なんでここまで戦えるのか、だよな。

こいつらにもトリップのこと言うか…?

信じてもらえる確率が限りなく0に近いんだが。



「――はぁ。やだやだ、これだから大人にはなりたくないんだよ」

「話す気が無いならお縄につけたっていいんだぜ」

「主導権握って楽しいか?こんな小娘相手に」

「アスカ……」

「だーもう!分かったよ!話せばいいんだろ!?」

「アスカ達、税金ドロボーのところ行くアルか?」

「んじゃ俺達も行こっかな」

「万事屋に出す茶はねぇよ」

「アスカと和樹はウチの従業員だぞ。しかも親御さんから預かってんだ。何かあったら困るだろ」

「……ちっ」

「それじゃ決定ですねィ。アンタ等、名前は?」

「え、涼宮…」

「アスカ、それ伏せ字使わなきゃいけないから!」

「へいへい。神凪アスカだ」

「日向和樹です」



私の悪友と親友の皆さん、お元気ですか。

今日はテロに遭いました。

なんか、向こう側とあんまり変わらない日々を過ごしてると思います。



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