銀色世界を進め! | ナノ


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アスカside.


そのまま見張りを全部倒して、一先ず人質を解放した。



「アスカ、それは…」

「ん?ああ、説明してなかったっけ?私、大抵の武器は使えるんだよ」

「どこに入ってたアルか?」

「四次元ハンカチの中。安心しなって。殺しはしないよ。血が出るとか面倒だし。
この銃は私が改造したエアガン。弾はちゃんとBB弾だよ。スピードと威力は本物と同じだけど、当たるとかなり痛いってだけだから」



説明するの忘れてた。

けど難なく奇襲は成功。和樹が迫真の演技をしてくれたお陰だ。



「じゃあ、和樹は?」

「僕は向こうの世界で声優をしてたんですよ。だから演技とか得意なんです」

「あと歌手もしてるぞ。私ファンクラブ第1号」

「何気に凄いんだね。驚いた」

「僕はあんまり戦えないけどね。自己防衛くらいで」



まずはこのシャッターなんとかして、人質を外に出すか。

シャッターを触り、素材を確認する。



「防弾、防刃…特殊シャッターだな。シャッターの向こう側にあるガラスも同じく。こりゃ壊すの疲れそう」

「派手にやらないでよ?」

「分かってるって」



刀を構えて、私は一気にシャッターを切りつけた。

シャッターが壊れたのを確認し、特殊ガラスも壊す。

やっぱり固い。刃が削れそう。



「ほい、壊れたぞ」

「ありがとアスカ!皆さん、今の内に外へ!」



和樹が声を掛けると、人混みが扉へ向かって迫る。

ジャンプして銀さん達のところに戻れば、「サンキューな」と言って銀さんが頭を撫でてきた。

お礼を言われるようなことしてないぞ。



「銀ちゃん、あれ!」

「ん?げっ」



神楽が指を指した方を見ると、黒い服を纏った沢山の男達が待ち構えていた。

あれ、もしかして真選組?



「おい万事屋。何でここにいるんだ」

「こっちの台詞だよ多串くん。何そのむさ苦しい団体は」

「攘夷浪士によるテロが起こったんだ。警察が動いて何が悪い」

「人質取られて攻めあぐねた奴等がよく言うよ」

「おいチャイナ。この倒れてるのはお前等がやったんかィ?」

「ふん!使えない税金ドロボーと違って、こっちには強くてカッコよくてカワイイ味方がついてんダヨ!」

「人質は全員無事だよ。いやぁ、また万事屋に貸しが出来ちまったな」

「僕等じゃなくて、そこにいる女の子達がやってくれたんですよ」



端から見てるとかなり仲いいな。真選組と万事屋。

ぼんやりと見つめていると、不意に向けられた殺気。

咄嗟に反応して、殺気の方向へ刀を抜いた。

目の前で刀がぶつかり合い、キィンというカン高い音が響く。



「……へぇ。今のは完全に不意打ちだと思ったんですけどねィ。まさか受け止められるとは」

「い、きなりなんだよ真選組一番隊隊長沖田総悟!人質助けてやったのにそれが礼か!?」

「別に、実力試しでさァ。気にすんな」

「するっつー……の!」

「!!」



一端離れるために沖田を蹴り飛ばす。

くっそ、何気にイケメンのクセに!実力試しって、それだけで襲うか普通!?



「おい総悟!何やってんだ!」

「土方さん、さっきの剣術見たでしょう?こいつただモンじゃありやせん。味方かどうか見極めなきゃいかんでしょう」

「うっさいな!今はただの一般市民だ!」

「“今は”?昔は攘夷志士だったりしてねィ」

「ふざけんな!私今年で17歳だぞ!」

「戦争に年齢は関係無いでしょうが」

「マジで腹立つ…!」

「おいゴラァ!なにアスカにいちゃもん付けてるネ!誰が人質解放したと思ってんだこのサド!!」

「それは俺にとって誉め言葉でさァ。テメェも人質になってたじゃねぇか。ププッ、だっさ」

「んだとゴラァ!!」

「神楽ちゃんっ。売り言葉に買い言葉はよくないって……」

「!?」



今、一瞬だけ。

声が聞こえた。

それは小さいけど、確実な悲願の声。

助けを、求めてる。



「たっくん、どこ!?」



女性の声で、はっとする。

たっくん?子供と離れちゃったのか?

じゃあ今聞こえたあの声は…そのたっくんの声?


たっくんとやらの所在も気になるし、この状況を打破する為に、まだ意識のある攘夷浪士に近付いた。



「…おい、お前」

「な、何だ…!?」

「他に仲間は何人いる?所在地も含めて教えろ」

「だ、誰が敵に味方を売るか!」

「我々はこの腐った国を正す同志!情報など売らぬわ!」

「天人に屈した幕府の犬やその関係者には特にな!!」



ダンッ



「黙れ」



うわぉ、何気に低い声が出た。

エアガンで顔面スレスレを撃たれた浪士の一人は、驚きと恐怖の色を顔に映している。

ついでに、和樹から「やれやれ……」っていう溜息まで聞こえた。そんなに呆れるなよ。



「私は確かに犬派だけど幕府の犬になった覚えは無い!」

「ツッコむところはそこなの?ねぇ。もう少し違うこと言えなかったの?」

「何言ってんだ和樹、私は正直に話しただけだぞ」

「空気を読もうよ。今少しだけシリアスだったよね?分かってやってたでしょ。雰囲気という言葉を知らない訳じゃないんだから、もうちょっと考えて。言動には気を使おうよ」

「え、空気?何それ美味しいの?」

「定番のネタはいいよ。それよりやることがあるでしょ」

「ん?ああ。空気をブチ壊して悪い。謝る」

「違うよ。攘夷浪士の人数と配置を聞くんでしょ」

「あ、そうだった」



再度、エアガンを撃つ。

少量の殺気を放ちながら、にこりと笑って質問した。



「なぁ、私同じこと繰り返すの好きじゃないんだわ。だからさっさと吐いてくれる?
お前等がドMだって言うなら、喜んで相手するけど」

「な、ななな仲間は残り20人だ!」

「全員屋上に向かってる!」

「此方の対応に応じない場合、小さな子供を使う予定になっているんだ!」

「屋上でリーダーと幹部が待っているッ」

「はい、ご苦労様ぁ」



そのお礼に全員一瞬で気絶させる。

後で警察に引き渡すか。今はそんな場合じゃないし。



「相変わらずのドSっぷりで」

「私はここにいる王子よりSじゃないぞ」

「お褒めいただき光栄でさァ」

「誉めてないよ、沖田君」

「見事な手際だね。慣れてる、みたいな…」

「まぁ、間違っちゃいないな。尋問、拷問は得意だし結構好k…じゃない、楽しいから」

「今好きって言おうとしたよね!?」

「しかも好きと楽しいってあんまり変わらないよ。理由が加わってるだけで」



細かいことは気にすんなって。

大人組はポカーンとしている。そこら辺の説明はまた後でな。



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