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銀時side.
「銀さん、どうします?」
「なんとか脱出して人質解放するのが先ネ」
「とは言っても、人数が多くて下手に手出しが出来ねぇだろ」
見渡した限りじゃ、見張りは15人。
隙を見付けるのは困難だ。
「それに…アスカと和樹が居ないアル」
「まだ捕まってないみたいだね」
「そのまま逃げ続けてほしいな」
無事を願っていると、奥の通路からガタンッという物音が聞こえた。
「誰かいるのか!?」
「出て来い!」
「う…ぁ……」
床に座り込んでカタカタと身体を震わせる、明るい緑髪の少女。
あれ…和樹か?
「和樹!大丈夫アルか!?」
「か…神楽ちゃん…?新八君に、銀さんも……」
「よう。怖かっただろ。ここで大人しくしてればとりあえず安全だ」
まだ来たばかりの土地でテロに遭って、脅えてるのが分かる。
さっき刀を突き付けられてたし、無理もない。
聞いた話じゃ、普通の学生らしい。テロに遭ったことなんて無いだろう。
「……おい、アスカは?」
「わ、分かんない。途中で、はぐれちゃって……」
「どこではぐれたか分かる?」
「2階の、本屋さん。途中で見付かりそうになって、アスカが……『時間を稼ぐから逃げろ』って……」
じゃあまだ逃げてんのか。少し安心だ。
けど武器も使えない至って普通の少女が、刀を持った攘夷浪士相手にどこまで保つか…。
「おい、貴様!」
「ふぇっ、あ、はい…!」
見張りをしていた攘夷浪士の一人が和樹に声を掛ける。
和樹はビクリ、と脅えながらも返事した。
「他に仲間はいるか?」
「い…居ません…っ」
「本当か!?」
「い、居たと、しても……絶対に教えません…っ!」
「何ぃ?」
和樹が必死に浪士と話している。
俺達は心配しながらも、手出しが出来ずにじっと見つめることしか出来ない。
「ひ、人質を取るような卑怯者に、教えることなんて何一つ無い…!」
「貴様、いい度胸だな」
「我等はただ望みをを果たすため、行動しているだけだ!貴様等のように天人に屈し抵抗を辞めた軟弱者とは違う!我等は我等の手で、今こそ正しい世界を取り戻すのだ!!」
身勝手で腐った古い思考だ。
そんなことしてもこの国は簡単に変わりはしないってのに。
「人質取ってる奴等の何が“正しい世界”だよ」
その声は、上から聞こえた。
「正々堂々と戦わないお前等は立派な卑怯者だろうが」
「貴様、何者っ…ぐわぁ!」
「ぎゃっ」
「く、速い……ぐぁああ!」
ふわりと降り立った、紅に黒が混じった髪。
左右で違う瞳。
少し見慣れていないのは、そいつが持っている刀だけ。
「ったく、なーんだ。あんまり強くねぇじゃん。お、銀さん達!怪我とか無いか?」
「アスカ遅い!」
「これでも早く来た方だっての」
最近増えた居候、アスカがそこに居た。
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